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パリ最新情報「ゲラン&コンテンポラリーアート!パリ本店で企画展が開催中」 Posted on 2021/11/10 Design Stories
パリのゲラン本店では、期間限定で自然素材を扱ったコンテンポラリーアート展が開催されている。
テーマは『When Material becomes art by Guerlain』。
これは、毎年10月末にパリで開催される国際的なアートフェア「FIAC」に合わせたもので、本来なら4日間で終わるイベントもゲラン本店では11月14日まで展示が続けられる。
パリのゲランといえば、フランスのビューティーシーンを牽引する名門ブランドだ。
創立は1828年、ヴィクトリア女王やナポレオン3世などの歴史に名を残す偉人たちもゲランフレグランスを愛用していたという。
シャンゼリゼ大通りの本店は1912年から存在し、100年以上同じ場所に店舗を構えている。
ホテルリッツ・パリを手掛けた建築家のシャルル・ミュエスによって建てられたブティックは建築としても美しく、19世紀の息吹を感じられる完成度だ。
期間中は3フロアを使って展示が行われ、世代も国籍もさまざまな21名のアーティストの作品を鑑賞することができる。
入ってすぐ目に入るのは、歴史的建造物にも指定されているエントランスのオブジェ。
これはスペインのアーティスト、ナッチョ・カルボネル作の『Table Cocoon16(繭テーブル16)』で、コルクや繭の廃材を使用したテーブルランプだという。
最初はゲランと廃材アートのコラボ、と聞いてしっくりこなかったが、その違和感のなさには驚いた。
企業と芸術の連携、といった点ではとてもフランスらしい試みで、この国が文化芸術においていかに「求心力」が高いか、実力を見せつけられたようだった。
普段は一般公開されないVIPルームの「サロン・ボワズリー」も公開され、今回はこの一室に「究極の」アップサイクリング作品が集められた。
例えばリヨネル・サバテ(仏)作の『Loup du 02/03/18(2018年3月2日の狼)』。
この作品は、パリの地下鉄シャトレ駅で集めた「埃」を素材に制作されている。
さらには現代アートの巨匠、セザール(仏)が殺虫剤の缶を圧縮した1970年の作品もあり、美しい貴賓室とのコントラストがとても印象的だった。
そして、ゲランで最も重要なコンセプトは「ミツバチ」の紋章にある。
香水の「ビーボトル」に象徴されるように、ゲランのアイテムにはミツバチのモチーフが刻印されている。
これはなぜかというと、ミツバチがフランス王政の象徴であったこと、創設者パスカル・ゲランが皇室御用達調香師であったことに由来する。
現在でもミツバチは知恵、幸運、創造のシンボルとされ、フランス人に愛される存在だ。
ということで、ゲランが企画するアート展ではミツバチ関係の作品が欠かせない。
トマス・リベルティニィ(スロバキア)作の『The Honeycomb Amphora』は「自然との共作」を試みた作品で、約6万匹のミツバチがアーティストと共に製作に携わったという。
さらに、16世紀の円形ひだ襟、ハニーワックス、はちみつを素材にした『La Régente(摂生)』など、女性アーティストの作品も。
ブティックのなかでの開催(無料)とは思えないほど、見どころたっぷりのエクスポジションである。
毎シーズン、デパート顔負けの豪華なデコレーションで私たちを迎え入れてくれるゲランだが、今年の秋冬はコンテンポラリーアートで埋めつくされた。
9月から新発売となった、ゲランの最高級フレグランスシリーズ『L’art et la Matière(ラール エ ラ マティエール)』とリンクした今回のテーマは、「素材」の力にフォーカスしたもの。
これらの香りが「究極のゲラン」と言われるように、素材の「究極の力」が感じられるアート展であった。
美の殿堂が打ち出す斬新なコラボレーションに、これからも目が離せない。(内)