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パリ最新情報「美的センスが光る、パリの八百屋のディスプレイ。映える秘訣は脱プラスチックに」 Posted on 2023/05/18 Design Stories
今、フランスの野菜は元気が良い。
「生きが良い」というのはもちろんなのだが、野菜がインフレの影響をほぼ受けていないことが大きな理由だ。
フランスでは食品の値上がりがまだ激しく、直近一年間では+15.8%となった。
しかしフランス産の果物・野菜だけは例外で、一年前とほぼ同じ価格を保っているという。
値上がりがあったとしてもそれは僅かで、平均の+15.8%には遠く及ばないそうだ。
理由は主に、冬〜春にかけての天候が暖かく安定していたため。
霜も降りず、国内の生産者にとっては順調な状況が続いた。
※国産の青果に限る。一方で輸入品は燃料コストの増加に伴い価格も上昇している。
また、野菜や果物がプラスチックに包まれていないのも大きい。
石油を原料とするプラスチックの包装資材は、ウクライナ問題で今も価格の上昇を続けている。
フランスの青果は、ほとんどがそのままの状態で販売されている。
多くはパニエ(かご)や木箱に入っており、買う側はそこから自由に選ぶことができる。
フランスの八百屋のディスプレイもまた、自由度が高い。
青果が裸状態のため自由が利くのか、陳列方法にもそれぞれの個性が光る。
ベリー類をアーチ状に並べたり、キャベツをカップに入れてみたり(?)と、店主のセンスが生かされているのも面白い。
最近、パリやパリ近郊でたまに見かけるのが、写真の珍ディスプレイだ。
こぼれ落ちそうなほどに積み上げられた果物の中には瓶ジュースがあって、その上でカットフルーツがバランスを取っている。
八百屋の店主に尋ねてみると、「どう? 綺麗でしょ!」という答えがあった。
大きな理由は特になく、これも陳列の一アイデアだということだ。
※スズランの日にはスズランもディスプレイに登場。
こうした自由なディスプレイができるのも、プラスチック使用が極限まで抑えられているからだと感じる。
なお、フランスで青果を購入する場合はほとんどが量り売りとなっている。
消費者は欲しい分だけを付属の紙袋に入れ、デジタル量りで値段(バーコード付きのシール)を貼る。
ちなみに紙袋は無料だが、「使い捨てはもったいない」ということで、捨てずに次回の来店時に持参するフランス人も増えている。
しかしこれがプラスチック包装だったと思うと、フランス産青果の値段はもっと跳ね上がっていたと想像する。
今夏はまた干ばつの危機も予想されているため、生産者にとっては油断のならない状況だ。
頑張る生産者と消費者、この両者をつなぐ八百屋のディスプレイが今、ますます美しく目を引くようになっている。(セ)