最近、カフェに入ると毎回と言っていいほど頼んでいるのが、ゴールデン・ラテ。みなさんご存知だろうか。カレーの原料として知られるターメリック（ウコン）が効いたスパイスラテで、他にもシナモンやブラックペッパー、生姜、カルダモンなどがふんだんに使われている。パリでこの時期に飲むゴールデン・ラテは、底冷えした体を芯から温めてくれるのだった。
 

 
最初にゴールデン・ラテと出会ったのは、レ・アール駅周辺の路地に隠れたCloud Cakesというヴィーガンコーヒーショップ。フランス人の友達が迷いなくそれを注文していて、テーブルに運ばれてくるなりその鮮やかな色合いに惹きつけられた。私が知らないと言ったら、日本にないの〜？！とびっくりされてしまったが、調べたら何年か前に日本でもターメリック・ラテという名前で流行っていたらしい。そこで一口もらってからすっかり私の気に入り、どのカフェに行ってもまずゴールデン・ラテがあるか探すようになった。パリでは大体置かれている確率が高い。よく誤解されやすいようだが、ターメリックが入っているからと言って、もちろんカレー味のラテではないので、そこだけご注意を笑。
 

 
スパイス系の飲み物って、ちょっと中毒性があるというか、どこか魔性の香りが漂っている気がする。中でもここのゴールデン・ラテはちょっと特別で、というのもヴィーガンカフェだからなのだが、ベースのミルクは植物性。さらに、通常加えられる蜂蜜の代わりに有機アガベシロップ（メキシコ原産のアガベという植物から作られる天然の甘味料）を使用している。それが関係しているのか、他のカフェで飲むそれよりも濃度感が少し違う気がする。口にする瞬間、スパイスの香り高い豊かな風味が広がって、ラテ特有のミルク臭さも全くなく、ほんのりと感じられる甘さ加減も絶妙なのだった。チョコレートマフィンやケーキとも相性抜群。ちなみに、メニュー表記はゴールデン・ラテ（Golden Latte）ではなく、ここではターメリック・スパイス・ラテ(Curcuma Spice Latte)と書かれている。カップの底にスパイスの粒が溜まりやすいので、最初によくかき混ぜるのもお忘れなく（私は毎回忘れてしまう）。
 

 
ちょっとわき道に逸れるが、ここの看板メニューCloud Bowlもぜひお試しいただきたい。温かいサラダボールと言ったらいいのかな、色んな野菜がたっぷり詰め込まれている。下に隠れているバスマティライス（インドやパキスタンの細長い米）、さつまいも、ブロッコリー、紫カリフラワー、スモークした豆腐、コリアンダーなど盛りだくさん。味付けはココナッツミルクのカレーソース。値段は13.5ユーロとそこまで安いわけではないが、見た目よりもしっかり量があり、これひとつでお腹いっぱいになる。おいしくて、栄養価も高く、ヘルシーなヴィーガンランチが食べたいときにはおすすめの一品。
 

 
ここはヴェルサイユにあるLa Cuisine de Phanieというお店。小さくてかわいい、こぢんまりとした空間がとても落ち着く。ファニさんという女性が経営するこのカフェでは、bioの食材を使った軽食やケーキが頂ける。メニューにゴールデン・ラテがあるのを見つけ、すかさず注文。こがね色のフォームミルクがふんわりと上に乗っていた。味も全体的にまろやかで、スパイスの感じも強すぎず、控えめに抑えられている。一緒に頼んだ洋梨のケーキは手作りの素朴な味わいで、ラテとよく合うおいしさだった。
 

 
実はゴールデン・ラテ、健康飲料としての側面もある。ターメリックや生姜の働きによって、炎症の緩和や免疫力の向上、消化の促進など、調べると色んな効能があるとわかった。さらにルーツを探っていくと、インドの伝統的な飲み物であるハルディドゥードゥ（ターメリック・ミルク）にたどり着く。ミルクにターメリックやスパイス、蜂蜜などを混ぜ、病気や怪我の治療、予防のためにインドの家庭では大昔から飲まれてきたのだそう。現代の健康ブームを背景に、欧米諸国によってそれがラテ風にアレンジされ、カフェ文化の中に取り入れられることになった。それがゴールデン・ラテの始まりと言われている。
 

 
たしかにそう言われてみると、疲れているときや風邪気味のときにも飲みたくなるような味かもしれない。お店によってスパイスの配合や濃さも微妙に変わるので、色々比べてみながらお気に入りを見つけていくのも、またひとつの楽しみである。カフェで何にしようか迷ったら、一度は試してもらいたい、ゴールデン・ラテの紹介であった。（ほ）