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パリ最新情報「売れ残ったクリスマスツリー、パリの動物たちへのプレゼントに」 Posted on 2022/01/12 Design Stories  

 
1月6日の公現際(エピファニー)が終わると、フランスのクリスマスムードもようやく幕を閉じ始める。
大型デパートなどではいまだ名残惜しそうにツリーが飾られている所もあるが、ほとんどの一般家庭では片づけが行われる。
そしてこの時期よく目にするのが、各家庭で不要になったモミの木の回収作業だ。
パリでは100近くの団体がクリスマスの翌日から1月下旬までのあいだ、公園などで回収スポットを設けている。


こうして砕かれたモミの木は、パリの庭園などで直接堆肥に変えられたり、緑道にも広げて使われたりするそうだ。
「自然の恵みを堪能したら、あるべき姿に戻す気配りを忘れずに」という精神のもとリサイクルが行われているので、購入する側も不安がない。
 

パリ最新情報「売れ残ったクリスマスツリー、パリの動物たちへのプレゼントに」



 
しかしパリでは、堆肥として再利用されるほかにも「動物たちへのプレゼント」として使われる目的もあるという。
パリ12区にあるパリ動物園(Parc zoologique de Paris)では、居住する動物たちに売れ残ったモミの木を毎年恒例で与えている。


パリ動物園は生息地域別に5つのゾーンで形成され、都会とは思えないほどの広さを誇る。
14ヘクタールの園内には約180種・2000もの動物たちが飼育され、特にキリンの多さで有名な動物園である。
特徴は、動物たちにストレスを感じさせないよう、ゆったりとした造りになっていること。
野生と同じというわけにはいかないが、自然に近い形を再現している。
 



 
1月8日には、この動物園で暮らす草食・肉食動物にパリで売れ残ってしまったモミの木が「食べ物」「遊び道具」として与えられた。
モミの木はビタミンとミネラルが豊富だそうで、山羊、アンテロープ、ギニアヒヒなどにプレゼントしたところあっという間に完食に至ったそうだ。


パリ動物園のピエール・イヴ園長によると、モミの木を与える目的は、いつもと違う植物を導入することで動物たちに良い意味での刺激を与えることなのだそうだ。
「環境強化」と呼ばれるこの習慣は、 飼育員たちが「草食動物が食べ物を探すことで発揮された好奇心、費やした時間」を観察する勉強にもなるという。


また、ネコ科の肉食動物には「遊び道具」としてプレゼントされた。
ハイエナは特に反応を示しているそうで、モミの木を独り占めしようとする姿も見られたのだとか。
さらには木に身体をこすって香りをつけるヒョウや、角をこすりつけるカモシカの例もあったそうだ。


ただし家庭や企業で回収されるクリスマスツリーは、プラスチックのオーナメントの残骸など動物たちに有害な物質が含まれているということで、動物園ではこれを受け取っていない。
いずれも花屋さんで売れ残ったまっさらなモミの木が対象だという。
 

パリ最新情報「売れ残ったクリスマスツリー、パリの動物たちへのプレゼントに」



 
こうして年に一度のプレゼントとして与えられるモミの木だが、その多くが数日で飽きられてしまうとのこと。
動物たちが興味を示さなくなった木は、園内で細かく砕かれ、土地の肥料としてさらに再利用される。


生木のツリーは木を伐採するのだから森林破壊につながっている、多くの消費者はそう考えるかもしれない。
しかし実際には、フランスのクリスマスツリーの大半は「クリスマス用」のために特化した農園で育てられている。
また生木を育てるメリットは、木の成長過程で大気から炭素を吸収・蓄積し、ライフサイクルの過程で発生する二酸化炭素排出量を相殺できること。


クリスマスツリーは年に一度のビッグイベントに欠かせないオブジェクトなだけに、その出所と行く末を知るのも使う人の責務と言えるのではないだろうか。
喜ぶ動物たちがいること、そして近隣の緑化に貢献できるという事実を知れば、不法投棄はゼロとなるだろう。(内)
 

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