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パリ最新情報「ガレット・デ・ロワの本場フランスから、2025年のラインナップをお届け!」 Posted on 2025/01/05 Design Stories
年末年始の時期になると、フランスのパティスリーに「ガレット・デ・ロワ」がずらりと並ぶ。
近年、日本でも人気が高いこの伝統菓子は、公現祭の日(キリスト教のお祝いの日、典礼では1月6日)に家族や友人たちとみなで食べるのが習わしだ。ただ現代では、より多くの人が祝いやすいようにと、1月の第一日曜日に設定されている。ということで2025年は、1月5日(日)が公現祭にあたる。
※一般的なガレット・デ・ロワ。パイ生地で作られ、中にはアーモンドクリーム(フランジパーヌ)が詰められている。とてもシンプルな焼き菓子
フランスの食文化の一つで、新年の風物詩でもあるガレット・デ・ロワ。実はフランスでは、発売時期が年々早まっているためか、12月のクリスマス前にパン屋やパティスリーで見かけることがある。
お店から下げられる日も特に決まっておらず、「お客さんが買いに来なくなるまで」という緩やかなスタイルが、何ともフランスらしい魅力を感じさせる。
では2025年は、どんなガレット・デ・ロワがパリの店に並んだのか。パティシエたちの力作をご紹介したい。
※「ニナ・メタイエ」のガレット・デ・ロワ
2023年に「世界最優秀パティシエ」の称号を授与されたパティシエール、ニナ・メタイエさん。彼女は近年のパリで、もっとも注目を集めるスター・パティシエールの一人だ。そんなメタイエさんが手掛けるガレット・デ・ロワは、昨年12月に再開したノートルダム大聖堂にオマージュを捧げたもの。
ステンドグラス風の美しい生地には、ポワトゥー・シャラント産(フランス西部)のバターが含まれているほか、シナモン香るフランジパーヌが特徴なのだそう! ちなみに一般的なガレット・デ・ロワは、写真のような金の王冠がセットで販売されている。
※ガレット・デ・ロワの中には、一つだけ「フェーヴ(fève)」と呼ばれる小さな陶器が入っている。フェーヴを引き当てた人は王冠をかぶり、その日だけ「王様(女王様)」になることができる!(写真はユーゴ・エ・ヴィクトールのフェーヴ。2023年のもの)
XLサイズのパン・オ・ショコラやニューヨークロールなど、いつも楽しいスイーツを提供してくれるパリのフィリップ・コンティシーニ。こちらからは、「ガレット・デ・レーヌ」と「ブリオッシュ・ド・ロワ」の2品が新しく登場した。
※「フィリップ・コンティシーニ」のガレット・デ・レーヌ
※「フィリップ・コンティシーニ」のブリオッシュ・ド・ロワ
「ガレット・デ・レーヌ」とは女王のガレットという意味で、たっぷりのヘーゼルナッツ・フランジパーヌと、キャラメリゼしたヘーゼルナッツがダブルで楽しめる、ナッツづくしの一品だ。
一方、王様のブリオッシュを意味する「ブリオッシュ・ド・ロワ」は、ふわふわのブリオッシュ生地に、フランジパーヌとコートジボワール産のチョコレートがたっぷりと。ブリオッシュの上には、キャラメリゼしたカカオがトッピングされた。
意見が分かれそうな2品だが、最近のパリではチョコレート風味のガレット・デ・ロワが大人気!
※「レクレール・ドゥ・ジェニー」のガレット・デ・ロワ
パリのエクレア専門店「レクレール・ドゥ・ジェニ」からは変化球、ブラウニーのガレット・デ・ロワが登場。ブラウニーはクッキー風ということで、フランジパーヌが苦手な方にもおすすめしたい。
※「バブカ・ザナ」のガレット・デ・ロワ
パリで大流行した東欧生まれのパン、「バブカ」。ブリオッシュ生地に、チョコレートやシナモンがたっぷりと練り込まれたものだが、このバブカの専門店「バブカ・ザナ」がユニークなガレット・デ・ロワを発表した。
ピスタチオ風味の「バブカ・デ・ロワ」は、ふっくらとした生地にフランジパーヌとピスタチオクリーム、フルール・ド・セルが加わったもの。ピスタチオを使ったスイーツはフランスの人々からとても人気が高い。
※老舗「ダロワイヨ」からはクラシックなガレット・デ・ロワが
このように、もはやフランスの国民食と言えるガレット・デ・ロワだが、地方によってさまざまなバージョンが存在するのをご存じだろうか。なかでも有名なのは南仏のブリオッシュ・デ・ロワで、これには砂糖漬けのフルーツや、周りにカリカリとした砂糖が添えられている。
また、北フランスの街ダンケルクには、ブリオッシュ生地にカスタードとバタークリームを混ぜた特別なバージョンがある。お雑煮のように、それぞれの地域で個性豊かな味わいが楽しめるのもガレット・デ・ロワの魅力だ。
※南仏のブリオッシュ・デ・ロワ
ガレット・デ・ロワは少しリッチなスイーツながら、1月のフランスには決して欠かせない。事実、フランスの調査会社IFOPが2018年に行ったアンケートでは、フランス人のなんと92%が「1月に一度はガレット・デ・ロワを食べている」と答えたそうだ。さらに、12月末から1月中旬にかけて、フランス全土でおよそ2,360万個ものガレットが消費されるという驚くべきデータもある。
ただ、一番の楽しみである「フェーヴ」は、エリゼ宮(大統領府)で振る舞われるガレット・デ・ロワには入っていないのだとか。これは「大統領は王になることはできない」という理由らしいが、フランスの人々がこうしたしきたりを守っていることが意外で、とても興味深かった。
正月ムードはあっけなく過ぎていくものの、昔ながらの風習を大切にして今に伝えるところは、日本もフランスも共通しているのかもしれない。(や)