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コロナ禍でどうなった!? フランスの不動産事情 Posted on 2021/03/28 Design Stories  

コロナ禍によるフランス全土の完全ロックダウンは、昨年3月から2ヶ月にも及び、外出を禁じられたパリジャン達が、郊外に引越を始めたという話は、身近でもよく耳にする。
あの歴史的なロックダウンから1年が経過したが、リモートワークが推奨されたことでライフスタイルが大きく変化し、フランス人を取り巻く不動産事情にも変化がみられている。
その実態を、不動産取引実績や、価格面での変化などから探ってみたい。

コロナ禍でどうなった!? フランスの不動産事情

※フランスでは売出し中の物件には、このような看板が
かけられている



まずは不動産取引実績数だが、完全ロックダウン中の2カ月間の契約成立件数は、前年同期比75%減にまで落ち込んだ。
不動産代理店の閉鎖や、内覧のキャンセルが相次ぎ、対面で売買契約することすらままならなかった
ためだ。しかし、ロックダウンが解除した2020年5月以降から大きく巻き返した。
これには、不動産購入プロセスのオンライン化が大きく貢献、会わずとも遠隔での契約手続きが可能になったのだ。
オンライン契約に関する法律は、2017年から存在はしていたが、コロナ禍をきっかけに一気に導入が進んだ。
不動産サイトでの3D内覧も充実しはじめた。360°カメラで複数の場所から撮影された3D空間を、自分のパソコンでありとあらゆる角度から見ることができる。
3Dデータとも連動し、空間の大きさを計測する機能も。案内してもらう手間がかからず、いつでも何度でも気軽に確認できるので、実際の内覧以上に便利な一面もある。
フランスの大手不動産情報サイトSelogerによると、3D内覧のついた不動産物件は、ついてないものに比べ、問い合わせ件数が平均5倍に増え、販売期間も平均21日短縮されるそう。
実は、フランスの不動産サイトでは、間取り図すら掲載されていないことが多く、「○㎡○部屋」という表記と数枚の写真のみで、実際に内覧に行かなければ、雰囲気を確認する術がなかった。
それに比べて3D内覧は大きな飛躍だ。

地球カレッジ

コロナ禍でどうなった!? フランスの不動産事情

※とある物件の3D内覧では、窓の外をクリックすると周辺地域の案内動画をみることもできた。



続いて、価格面での変化をみてみよう。
価格情報に強い不動産情報サイトmeilleursagents.comのレポートによると、フランス全土の不動産価格は前年比2%の上昇率でも、パリは1.8%減。コロナ禍以前のパリの不動産価格は常に値上がり状態で、投資対象として外国人からの人気も根強かった。
特にここ5年間で30%も値上がりしただけに、この値下がりには驚きだ。
パリに限らず、リヨン、マルセイユ、トゥールーズ、ニースなどの大都市の値段は徐々に下降中。ロックダウンの影響による郊外人気が現れ始めたといわれている。
さらにパリの住宅事情にフォーカスしてみたい。
石造りの歴史的な集合住宅がひしめき合うパリでは、住宅面積も他の地方と比べると突出して狭い。
フランスの公証人役場が発表している「購買力指標」の図は、収入に対して購入できる不動産面積を各地域ごとに示している。
面積が小さいほど、不動産価格が高いということになる。

コロナ禍でどうなった!? フランスの不動産事情

※公証人役場の発表資料より引用



これによると、イル・ド・フランス県と呼ばれるパリを含む首都圏の52㎡に対して、他の地域は概ね100㎡を超えている。
フランスにおいて、パリの住宅が他県に比べて、いかに特殊なものであるかがわかる。
そういった都市部の住宅事情もあり、地方に別荘を持つ人は少なくない。
特にパリジャンに人気の別荘地は、パリから一番近い海があるブルターニュ地方で、車で3時間程度で行くことができる。
現在第3回目のロックダウン中だが、ロックダウン前夜にパリジャンが、ブルターニュ地方の中でも特に人気の海辺の町、サン・マロに押し寄せたことが話題になった。
リモートワークで、海辺にいながら仕事ができるよ
うになり、バカンス時期でなくとも人が増えたそうだ。franceinfoラジオで、サン・マロの市長がインタビューに応えていたが、市長及び、周辺住民共に、パリジャンたちが来ることに対して、特にネガティブな感覚はないそうだ。
市長の「各自の身の安全のためにも、ソーシャルディスタンスは尊重するように」という呼びかけに留まっていた点に、懐の深さを感じた。そんな温かさとのびのびとした空間に惹かれて、別荘が本邸になっていくパリジャンも多そうだ。(ウ)



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