欧州最新情報
パリ最新情報「パン屋の食品ロスに立ち向かう、“明日”のパン」 Posted on 2023/10/08 Design Stories
世界でも有数のパン消費国であるフランス。
パンはフランス人の日常生活における中心的な食品だが、かなりの廃棄が発生しているのもまた事実だ。
仏アデメ社が2016年に発表した調査によると、毎年捨てられる1000万トンの食品のうち、パンはかなりの割合を占めており、総ロスの13%に達したという。
現在のフランスでは、食品ロス問題にインフレが加わったこともあって、食品廃棄対策アプリの「Too Good To Go※」が盛況だ。
※Too Good To Go…お店で余った食材や商品を、お得な価格で提供するプラットフォーム。
また余った食材を学生支援のために回収するなど、フランスには食品ロスに立ち向かう協会がたくさん存在している。
そしてこうした組織は、22年初めから続くインフレでどんどん増加している印象を受ける。
23年の6月には、余ったパンを救う専門店がパリ11区にオープンした。
その名も「Demain(ドゥマン)」、“明日”というパン屋だ。
扱うのは、近隣にある16のパン屋から売れ残った商品を集めた、「半額のパン」ばかり。
ウィンドウにはブリオッシュ、クロワッサン、ヴィエノワズリー(菓子パン)など、従来のパン屋と同じ商品が並ぶ。
価格は50サンチーム(79円)〜で、すべて日持ちのする、売れ残ったがまだ食べられるパンだということだ。
※販売するのは前日に作られたもの。
※日持ちのする天然酵母のパンを中心に扱っている。
実際にパン屋の販売員だったという創設者は、「パン屋にもよりますが、1日の生産量の5〜10%が廃棄されていることに気づき、残念に思っていました」と語る。
また、フランスでたびたび起こる干ばつ問題にも直面する機会があったといい、「私たちは1斤のパンを作るには、つまり小麦を育てるには、150リットルの水を使わなければならないことを理解する必要があります」と話してくれた。
※クロワッサンをプラリネ加工したおやつ、50サンチーム(79円)
しかし「Demain(ドゥマン)」は近隣のパン屋と競合するわけではなく、パン屋と顧客をつなぐ“鎖”のような存在なのだという。
商品は日によって異なるが、リーズナブルな価格のため学生さんも多く来店するのだとか。
※チョコレートのブリオッシュ、サンドイッチなどはその場で温めて提供。
こうした価格の安さは魅力的であるものの、やってくる顧客の多くは安さだけでなく、廃棄物対策という点に大きく注目しているそうだ。
確かに、パンを回収する協会は数あれど、専門店というのはなかなかない。
避けられないインフレに直面し、パン職人たちも値上げを余儀なくされている。
なお「Demain(ドゥマン)」では売れ残り(ダブル廃棄)がほとんどないそうだが、それでもパンが残ったら、クルトンやパン粉、そして堆肥に変えているとのことだ。
このような店舗およびシステムは、今のフランスで増えており、需要も高い。
続くフランスのインフレ問題、干ばつ問題が、食品ロスに対する意識を一気に高めているようだ。(コ)