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パリ最新情報「フランス、2030年から女性幹部の比率40%を義務化へ」 Posted on 2021/12/21 Design Stories
12月16日、フランスでは従業員1000人以上の企業に対して、経営層の女性比率を2027年から30%以上、2030年から40%以上とすることを義務化する法案が可決された。
フランス国内では、農業以外のすべてのセクターで、自営業または会社経営者の数は約270万人いるとされている。
上級管理職として働く女性は徐々に存在感を増しているとはいえ、いまだに少数派であり、全体の割合では5分の1しかいない。
フランス政府はそういった状況を考慮し、今後義務化することで「本当の経済的・職業的男女平等」を目指すと述べている。
なお、対象となる企業は毎年フランス労働省に結果を公表しなければならず、違反した場合は罰金が課せられることも決まった。
フランスで、「夫の許可なく女性の就労が認められる」ようになったのはつい50年前のこと。2000年代初めの男女格差を示す調査、「ジェンダーギャップ指数」のランキングでも、フランスは115カ国中70位と、欧州先進国では下位に位置していた。
ところが、2021年の同調査では156か国中16位とランクが急上昇。この20年足らずで女性の目覚ましい活躍が見られるようになったのである。
その背景にはもちろん女性自身の努力もあるが、男性側の深い理解とサポート無くしては成立しなかった。
女性が生きやすい社会は男性も生きやすい、そういった価値観が広く浸透していると言えるのではないだろうか。
人権の国フランスでは、男女の人権がある程度確立している。なので男女格差問題も、「男性と同じ権利を」という考え方で刷新されてきた。
そして、教育の充実に関しても同じことが言える。超学歴社会のフランスでは、良い学歴があればより良い仕事に就ける。
女性にも学歴を、という考えは女性自身だけでなく、経済成長を図る国も望んだことなのだ。
これによって、過去に男性だけが担っていた経済的負担は必然的に軽減された。
2000年には法律で男女ともに週35時間労働(一日平均7時間)が設定され、仕事と家庭の両立が可能に。
現在のフランス世帯はほぼ男女共働きで、3歳以下の子どもを持つ母親でも、就業率は約8割を超えている。
女性もきちんとした仕事に就く、というのが当たり前になっているフランス。
例えば初対面の会話でも、年齢を聞かれることがまずない。
その代わりに、「どんな仕事をされているのですか?」と質問されることがほとんどだ。
プライベートであっても、役所や病院での世間話においても、女性がどんなフィールドの専門知識を持っているか、そのようなことが会話の切り口になるのだ。
9年後に経営層の女性比率が40%となることで、さらに女性が活躍できる環境が整うだろう。
ただ、現状に甘んじず、さらなる改善を望むのがフランスだ。現状維持を良しとしない、そのような価値観が功を奏しているのではないだろうか。
将来的には義務化や罰金などのルールを必要とせず、自然な形で女性が活き活きと働ける未来が来るよう願っている。(内)