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パリ最新情報「仏警察による少年射殺、深刻な暴動へと拡大。緊張が続くパリ郊外」 Posted on 2023/07/01 Design Stories  

パリ郊外・ナンテール市で、警官が車の停止命令に応じなかった17歳の少年を射殺したという事件が起こった。これが引き金となり、フランスでは各地で深刻な暴動が27日夜から続いている。
フランスでは18歳から免許を取得できるが、17歳の少年が運転していたことに対し、それでも射殺する必要はないと怒りが爆発している。少年(ナエル君)はアルジェリア系フランス人だった。

パリ最新情報「仏警察による少年射殺、深刻な暴動へと拡大。緊張が続くパリ郊外」



17歳の少年は、交通検問から逃れようとした時に警官に至近距離から胸を撃たれて亡くなった。情報がTwitterで拡散されると、その日のうちにナンテール市で大規模な暴動が発生(現場を偶然撮影した動画も流れた)。銀行、バス、路面店などが放火され、抗議者と警察の間で激しい衝突が起こった。

暴動はその後も毎晩続いており、パリ、パリ郊外の他の都市部、フランス各地にも拡大している。なお28日にはパリ南郊外・クラマール市を走る路面電車、トラム6番線(T6)の車両に石が投げつけられた後、放火され全焼したという事件も起きている。クラマール市では同様に市バスも11台が放火されている。

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これを受けた複数の自治体は夜間外出禁止令を発令した。現在ではパリ郊外・ムードン市の一部(7月3日まで)、ヌイイ・シュル・マルヌ市の一部(7月3日まで)、サヴィニー=ル=タンプル市の全域(7月2日まで)、クラマール市の全域(7月3日まで)が対象となっているが、上記以外の地域にも拡大する可能性があるので、その場合は居住自治体の公式SNSなどで確認してほしい。※外出禁止の時間帯は各自治体によって異なる。

パリ交通公団(RATP)は、イル・ド・フランス首都圏内において21時以降のバス、及び路面電車の運行を取りやめると発表している(別途通知があるまで)。
しかしながら郊外では、夜間以外でも路面電車が終日運転取りやめとなった路線があるため、乗換案内アプリなどで随時確認が必要だ。

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※ 地下鉄とトラムの運行状況を知らせる掲示板。赤がいっぱい。



仏内務省によると、29日夜から30日未明にかけて暴動に参加した約900人が逮捕された。そのうちの大半は14歳から18歳のティーンエイジャーで、場所はパリ市内が最も多かった。
しかし少年の死は、仏警察の権力行使や人種問題、富裕層から分離されていると感じる郊外・国外出身者について、より広範な議論を呼び起こす事態となっている。これに便乗してインフレ問題、マクロン政権の年金引き上げ問題に不満をぶつける者も少なくない。
筆者も事件の発端となったナンテール市の隣町に暮らしているが、国外からの移住者が大変に多い場所で、夜には緊迫した空気が流れており人通りも激減した。

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少年を射殺した警官は殺人罪ですでに拘束されたが、今もフランス各地で公共施設や車両等への放火、店舗の略奪、警察との衝突等が発生している。
なお少年の葬儀は7月1日(土)にナンテール市で行われると同市長によって発表された。これによりデモ・暴動が拡大する可能性があるので、フランス在住・滞在中の方は夜間の外出に十分気を付けたい。(大)

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