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パリ最新情報「フランス国民議会選挙、左派連合が最大勢力 予測とは異なる展開に」 Posted on 2024/07/08 Design Stories  

 
7月7日(日)、フランスでは、国民議会選挙の決選投票が行われた。
6月30日に実施された第一回投票では、極右政党「国民連合」が33%の得票率を獲得して首位に立ち、次いで左派連合の「新人民戦線」が2位、マクロン大統領の率いる与党連合が3位という結果だった。今日の決選投票はそれに続くもので、国民議会の議席数577のうち、当選者が決まらなかった501の選挙区で行われた。
 

パリ最新情報「フランス国民議会選挙、左派連合が最大勢力 予測とは異なる展開に」



 
左派連合「新人民戦線」と大統領陣営の与党連合は、今回の決選投票に向けて、当選の可能性が低い候補者を辞退させるなど、極右「国民連合」の勢いに歯止めをかける対策を講じていた。
そのためフランスの主要メディアは、事前に「どの勢力も過半数(289議席)に届かないだろう」と予測。直前の世論調査でも、「国民連合」の獲得議席数は最大であるものの200〜230にとどまり、左派「新人民戦線」は165〜190、大統領陣営は120〜140の議席数を獲得するだろうとされていた(仏BFM TV調べ)。
 



 
しかし投票結果は、左派連合「新人民戦線」が182議席を獲得してトップに。過半数には満たないが、国民議会で最大の議席数を獲得した勢力となった。マクロン大統領の与党連合は168議席で2番手に、最大勢力になるだろうと予測された極右政党「国民連合」は143議席と3番手だった。
今回は最終的に「国民連合」が失速、3位という結果に終わった。事前の世論調査でまったく予測されなかったこの展開には、驚く国民も少なくなかったという。
 



パリ最新情報「フランス国民議会選挙、左派連合が最大勢力 予測とは異なる展開に」

 
決選投票を終えたフランスでは、7月8日以降の政治的シナリオに早速の注目が集まっている。
フランスの憲法第8条では、首相は大統領が任命するが、どのような基準で選ばれるかは明確に定義されていない。ただ今回のように、どの勢力も国民議会で過半数の議席を持たない場合には、連立内閣(1)もしくは党派色の薄い首相で構成される内閣(2)が発足する可能性があるという。
(1)では相対的過半数となった左派の社会党、共産党、不屈のフランス、緑の党いずれかに所属の者が、首相に名乗りをあげる正当な候補となる。ただしそれには、マクロン大統領率いる与党連合(中道派)が行う信任投票に同意した者でなくてはならない。また左派でも不屈のフランスは与党連合との連立を望んでいないとされるため、しばらくは内政の混乱が続く見通しだ。
(2)では、マクロン大統領は政治的影響力が小さく、さまざまな経歴の閣僚で構成される内閣を発足することができる。イタリアで2021年から2022年にかけて発足したマリオ・ドラギ政権が例だ。しかしながら、現在の状況ではこの可能性はきわめて低いという。

若きジョルダン・バルデラ氏を党首に迎えた「国民連合」は、第二次世界大戦以降のフランスで初の極右政権誕生という可能性を示唆した。主要な世論調査でも「国民連合」が最大勢力になるだろうと言われており、一時期は極右のバルデラ首相が誕生するかもしれないと噂された。しかしフランス国民は結果的に、左派を選ぶという異なる決断を下したのだ。

フランスはEUにおいて重要な役割を担っているが、政治的局面が未知の領域に入ったことで、国内では大小の混乱が続くとみられている。このたびはフランスの政治状況を再定義する重要な選挙だっただけに、国民の関心も非常に高く、最終的な投票率は67%を記録した。(内)
 

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