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パリ最新情報「パリで子供向けの映画学校がスタート、未来のクリエイターを本格育成へ!」 Posted on 2022/01/30 Design Stories
フランスは、世界で初めて映画を作った国だ。
1895年に「映画の父」と呼ばれるリュミエール兄弟が映写機を発明してから約130年。
以来、アメリカと並んで世界の映画発展に大きく貢献してきた。
現在では映画の多様性を守るため、映画産業へのさまざまな政府助成金や保護政策が存在する。
中でも国が力を入れていることに、学校における映画の「鑑賞教育」がある。
フランスの国立映画センター(CNC)は、映画鑑賞力を育成するという目的のもと、小学校、中学校、高校と協力して、生徒に見せる映画プログラムを学校教育に組み込んでいる。
作品はフランス映画に限らず、世界中からセレクトされた多様な映画をチョイスするとのこと。
年齢に合わせて選定されたリストから1年間に3本、学校側が自由に選べるという。
「誰もが平等に文化を享受できる」という考えのもと、子供たちに意見やアイディアを交換させることで、映画の鑑賞力や批評力を育む目的があるそうだ。
しかし、それは「鑑賞」だけに留まらない。
1月22日にはパリ2区にある施設で、子供向けの映画学校「シネキッズスクール(École Ciné Kids)」がスタートしたのだ。
内容は演劇指導だけでなく、カメラテスト、ロケハン、なんとキャスティングレッスンまであるという。
対象年齢は12歳〜18歳までで、週末や、子供たちの冬休み・夏休みを利用して有料で開催される。現在の在籍人数は12人。
「シネキッズスクール」を考案し率いているのは、女優・脚本家のアレクシア・サンチス氏と、映画学校で教鞭をとるフランク・ロピス氏の二人。
「パリのプロダクションには多くの子役たちがいますが、彼らはほとんどトレーニングを受けていません。私たちは“監督目線”で、映画の世界において必要なことを伝えたいと思っています。また、早いうちから現場の空気を味わうことで、将来の夢を確実に叶えてほしいと思っています。」と仏紙のインタビューで語った。
すでに俳優や映画監督を志す生徒もいるようで、レッスンは有名映画のセリフ朗読から、
サンチス氏が考えた即興のお芝居まで多岐にわたる。
また、お互いの演技についてディスカッションする場も設け、子供たちの映画に対する「コメント力」を鍛えている。
もちろん、バカンス中の「思い出」として参加する生徒もいるのだが、保護者たちは「自分ではない役を演じて、喜怒哀楽の感情を客観的に観察するのはとても良いこと」とし、その貴重な体験を喜んでいるそうだ。
パリには子供向けの映画館がたくさんあり、多くの文化センターで課外活動も行っている。しかし、これほど本格的な映画学校はシネキッズスクールが初めてとのことだ。
ただ、その背景にあるのは、フランス行政が映画館・アーティスト群と手を取り合い、子供たちに教育することによって「未来の映画人を育てている」という事実である。
芸術としての映画文化を次世代へ残すということは、映画産業を守りビジネスを発展させることにもつながる。
近年では、一つの映画館に複数のスクリーンが入る“シネマコンプレックス”が台頭してきているが、パリにはコアな観客を満足させる、“ミニシアター”も多く残っている。
ハリウッド大作は自宅で鑑賞し、インディペンデント映画や旧作の再上映はレトロな映画館で鑑賞する…感度の高い若者のあいだでは、そんな新しい映画の楽しみ方もあるようだ。
どちらにしてもこの街からは、映画を観る側・つくる側、双方のパッションを肌でひしひしと感じることができる。
シネキッズスクールを通して、パリの芸術に対する懐の深さに改めて感心した。(ル)