欧州最新情報
パリ最新情報「歴史的な干ばつで変わるフランスの食卓。秋以降に不足が予想される食品とは」 Posted on 2022/08/11 Design Stories
史上最悪の干ばつに見舞われているフランス。
続く熱波・雨不足が影響し、植物が秋のように枯れ始めたところもある。
農業や酪農への被害は特に深刻で、高温のため農作物が育たなかったり、乳牛に影響が出たりと心配なケースが報告されている。
ただ気になるのはこれが「今年だけ」とならないことだ。
フランス国立農業・環境研究所(INRAE)のフィリップ・ドゥベイク所長は、「10年に一度の気候変動という時代ではなくなりました。近年は毎年、異常気象が農業に影響を与えています」と指摘し、10年後に起こるであろう“50度のフランス”に警鐘を鳴らした。
今後も起こり得る干ばつや熱波は、フランスの食卓にどのような変化をもたらすのか。
今年の秋以降に不足が予想される、3つの食品リストと合わせて述べたい。
まず現在のフランスで最も深刻なのが、牛乳の生産である。
フランスでは、6月からの雨不足により牧草が順調に育っていない。
そのため冬用の備蓄を切り崩して使う酪農家が続出していて、資金不足により泣く泣く家畜を手放す所もあるそうだ。
牧草だけではない。乳牛に与える飲み水そのものも不足しているので、牛の発育が滞りミルクが思うように出せないのだという。
これは秋以降、スーパーで牛乳が欠品になる可能性を示唆している。
ところが冬用の備蓄飼料を使ってしまった酪農家も多いため、今秋だけでなく2023年以降も続く恐れがあるとのことだ。
飼料の高騰は主にウクライナ問題に起因する。
しかし、例え戦争が終わったとしても天災は免れない。
そこでフランスの農家たちは今、地元自治体や国に対して災害基金を設けるよう働きかけている。
この災害基金とは農家と国が折半で飼料を購入するというもので、それによって農家だけが被害をこうむるのを防ぐことができるという。
ジャガイモの生産にも大きな影響が出ている。
ジャガイモは主にフランス北部で生産されており、干ばつの影響が比較的小さかったため数に不足はないが、その代わりサイズが小さくなってしまったという。
これは、ジャガイモから派生する食品に変化をもたらす可能性がある。
例えばポテトチップスやフライドポテトといった加工食品は、サイズがあまりにも小さすぎるためジャガイモを原料にできなくなる。
ただこれは今に始まったことではなく、フランスでは過去10年の間に生産量が6%も減少している。
そのため今後はサツマイモやヒヨコ豆といった、より少ない水分で育つデンプン質で加工食品が作られる可能性があるとのことだ。
フランスのワイン生産もジャガイモと同様、ある変化が危惧されている。
2022年春の霜害で一時はブドウの生産が危ぶまれたのだが、その後の好天で回復し、生産量は昨年より増加傾向にあるという。
ただ暑さのためブドウは甘く育ち、酸味が少なくなり、今後は甘口のワインが増えるというのだ。
また酸味、香り、糖のバランスが崩れることで、ワインはよりアルコール度数が高くなるとも言われている。
他のフルーツにも同じことが言える。
今年のフランスの果物は、桃やサクランボなどの糖分がとても高い。
ところが熱波で早く枯れてしまうため、ワイン農家を含む農業者は収穫を例年より2〜3週間早めているとのことだ。
現在、フランスにはこの夏4度目の熱波が到来中だ。
ニュースで報じられていた通り、最高気温が30度を下回らない日は本当に多い。
仏農業においては来年から種まきの時期を早くするなど解決策も講じられているのだが、10年後に予想される“50度のフランス”ではそれでも危うくなってしまう。
フランスの食卓に並ぶ食品が変化するのは確実なので、我々も心して対応していきたい。(オ)