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パリ最新情報「ドライフラワーに魅せられて。パリ初のボタニカルコンセプトストアがオープン」 Posted on 2022/04/22 Design Stories
アンティークにも似た、生花とはまた違う魅力を持つドライフラワー。
切り花だと命が短く、プラスチックの造花は人工的すぎる。
しかしドライフラワーは息が長くて自然の美しさもあり、ちょっと粗野な佇まいも素敵。
ということで、ドライフラワーに魅せられているパリジェンヌがとても多い。
パリに花屋はたくさんあるものの、ドライフラワーだけを専門に扱うブティックはこれまで
ほとんどなかった。
そんなパリジェンヌの夢を叶えてくれる「ボタニカルコンセプトストア」が4月9日、春の訪れとともにマレ地区にやってきた。
ショップの名前は、HERBARIUM(エルバリウム)。
ドライフラワー、観葉植物、花瓶、オーガニック肥料、テーブルウェアなどを扱っており、押し花のワークショップも開催する。
エルバリウムは数年前よりパリ市内でポップアップストアや押し花のアトリエを開いていたが、ここまで本格的なショップをオープンさせるのは初めて。
金融アナリストから押し花作家に転身した、パリジェンヌのマリオン・ルイヤ氏が立ち上げた。
エルバリウムの意味は、直訳すると「植物の標本」。
フランスの蚤の市では、額に入った押し花のエルバリウムをよく目にする。
フランスでは古くから植物愛好家や園芸家のあいだで、植物を押し花にして図鑑のように集めたり、インテリアとして飾ったりする方法が親しまれてきた。
そんなエルバリウムが今、マリオンさんの手でモダンに生まれ変わり、現代のパリにしっくりくるようにアレンジされたのだ。
ショップのメインは、ドライフラワーのブーケ・バーだ。
お花はすべてフランス産。
プロの手によって作られた何種類ものドライフラワーから、好きな花をチョイスして自分好みのブーケをあつらえてくれる。
ドライフラワーは色を綺麗に保つのが難しく、湿気などもかなり影響する。
乾燥したフランスの気候はドライフラワー作りに向いているのか、従来のイメージよりだいぶ鮮やかなのが印象的だった。
オーナーが押し花作家というだけあって、押し花コーナーも充実している。
コンセプトは、花を絵画のようにクリエイティブなものとして使用すること。ここではパリらしい、現代アートのような作品が並ぶ。
そしてエルバリウムでは定期的に押し花のワークショップも開催しており、実際に押し花作りを学ぶこともできる。
押し花は自由にレイアウトしているように見えるが、実は緻密にデザインされていて、プロセス全体を通して細心の注意が必要なのだとか。
完成するまでに少なくとも2週間、熱帯の厚みのある葉っぱだと2ヵ月を要することもあるため、花が好きな気持ちと忍耐力のどちらも大事だという。
最近のパリでは少しずつ、ドライフラワーが注目を集めている。
花屋さんはたくさんあるものの、切り花をその都度捨ててしまうのはもったいない。
ということで、ドライフラワーとして蘇らせる「スローフラワー」を実践する人がじわじわと増えている。
生花とドライフラワーのどちらも扱うハイブリッドな花屋さんも増え、持続可能なモノづくりがパリでは当たり前の感覚になりつつある。
確かに、市場やお店では花が開きすぎたり弱ったりすると売り物にならなくなってしまう。
結婚式やイベントの飾りつけも同じで、廃棄されてしまう花はとても多い。
そういったことからも、ドライフラワーの市場は今後ますます広がるのではないかと思う。
自然が少ないパリだからこそ生まれる、植物への熱心な取り組み。
アンティーク家具にもよく似合う、ドライフラワーの人気が勢いを増している。(ル)