欧州最新情報

フランスを代表する世界の現代美術家 ボルタンスキーへのオマージュ展同時開催。 Posted on 2021/10/18 Design Stories  

地球カレッジ

新しい夏を迎えようとしていた去る7月、フランスはもとより世界で、そして特に日本で愛された現代美術家のクリスチャン・ボルタンスキーが76歳でパリにて天昇した。
その彼の展覧会が、驚くなかれ、フランスを代表するベルサイユ宮殿、ルーブル美術館、ポンピドー・センター現代美術館で、今、同時開催されている。

世界の一大美術館であるルーブル美術館では、知る人ぞ知るドゥノン翼の、大回廊での「クリスチャン・ボルタンスキーの古い記憶1965–1988」を展示。
共存する死と生を生涯のテーマにした彼の代表的な作品で、古い錆びついたビスケットの缶がいくつも並び、それを利便的なランプがやはりずらりと並んで照らしている。
この展示にたどり着くには、美しいギリシャやローマの彫刻の中をくぐり、サモトラケのニケを拝んで、厳かなレオナル・ド・ダビンチの絵画群を目指すといい。
モナリザのギャラリーもすぐ横だ。
彼の作品は、それらの偉大な作品たちと同じ強さをもっていることに驚くが、それは人間の死と生を色濃く表しているからだろう。(2022年1月10日まで)
 

フランスを代表する世界の現代美術家 ボルタンスキーへのオマージュ展同時開催。

※ルーブルの「クリスチャン・ボルタンスキーの古い記憶1965–1988」



ベルサイユ宮殿のロワイヤル・チャペルでも、彼の代表する作品に触れられる。
美術館ではないそこに(チャペル=礼拝堂、小教会とは名ばかりの、豪華絢爛な芸術と言える絵画がその天井や壁に巡らされているとしても)、一見無機質な現代アートが供えられるということに、私たちはメッセージを見つける。
それは目に見えるものでないだけに。作品タイトルは「話す大時計」(2003年)。(2021年11月6日まで)
 

フランスを代表する世界の現代美術家 ボルタンスキーへのオマージュ展同時開催。

※ヴェルサイユ宮殿の正面。右側がボルトンスキーの作品のあるロワイヤル・チャペル

そしてポンピドー・センターの現代美術館では「クリスチャン・ボルタンスキーの不可能な人生」(1968年)のフィルムを始め、センターのボルタンスキーの貴重なコレクションが展示されている。
彼の作品が現代美術というカテゴリーにある限り、ここが彼の作品の一番ふさわしい居場所であるはずだが、ボルタンスキーの作品は予期せぬ空間にあってこそ、そのメッセージがさらに私たちの奥深くに届くような気がするがどうだろう。
それでもボルタンスキーを知るには訪れるべき展覧会。
そして録音された鼓動の響きと共に灯り消えるランプ「心臓」は、見逃してはならない。(2022年4月13日まで)(ア)
 

フランスを代表する世界の現代美術家 ボルタンスキーへのオマージュ展同時開催。

※ポンピドー・センターの「心臓」。最も代表的なもののひとつ

※Le Coeur, 2005 © Wolfgang Günzel


*クリスチャン・ボルタンスキーをまだ知らない人へ。1944年のナチス占領下、フランス人の母と医者のユダヤ人の父の元にパリで生まれる。父は床下に隠れて長い間生活。学校へは行っていないが知的階層にある暖かな家族の元で、絵を褒められて幼い頃からアーチストになることを目指す。1960年代から作品を発表。フランスのみならず世界で展覧会を成功させ、各国際展にも招待され高い評価を得る。日本では新潟県越後妻有トリエンナーレ、瀬戸内国際芸術祭等に参加。東京庭園美術館、大阪国立国際美術館、東京国立美術館、長崎県美術館など展覧会を開催する。高松宮天下記念世界文化賞も受賞。
 

自分流×帝京大学