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パリ最新情報「記者の質問に首相や大臣たちが真剣に答え続ける生放送の迫力」 Posted on 2020/12/11 Design Stories  

今、筆者はテレビに齧りついて、首相府からの「ロックダウン解除に向けた」国民への説明のための生放送を見ている。
15日にフランスのロックダウンが解除になるのか、ならないのか、だけではなく、いったい何が今フランスで起きているのか、国民はどうするべきか、政府はどうあるべきか、などを、首相や大臣が、真剣に語っている。すでに2時間近く、途切れることなく続いてる。
その内容については後述するとして、少し失礼な言い方だが、政治家たちの国民を説得する姿勢が迫力に満ちていて、実に面白いので、リポートしたい。

パリ最新情報「記者の質問に首相や大臣たちが真剣に答え続ける生放送の迫力」



どのような質疑応答かというと、首相はまず最新の政策について30分ほどノンストップで一方的に国民に向けて自分の言葉で説明をする。
その後、そこにいる記者たちの質問を一斉に受け始めるのだ。
メモをとりながら、耳を傾け、5つくらいまとまったところで、全部の質問に、いっぺんに回答するというスタイルである。
これが迫力ある。
前首相も同じようなことをやっていたが、カステックス氏になってから、さらに人間性が増した。
「その質問に答えられない」というような返答はまずないし、丁寧なだけじゃなく、かなり熱弁をふるって、国民が今とらなければならない行動などを非常にわかりやすく、時に国民を叱ったり、慰めたり、ともかく力強く説明していく。
もちろん、プロンプターをみたり、官僚が差し出すあんちょこを見ることも一切ない。
頭の中に全て入っているのだ。
このような生放送を、彼らは頻繁に繰り返している。
いったいどういう頭の構造をしているのだろうと、いつも思う。
マクロン政権はいろいろ批判されているが、大臣たちが若いこともその熱血さに拍車をかけているのかもしれない。
で、首相がだいたいは答えるのだけど、内務とか健康に関する専門的な質問にだけは官僚じゃなく、大臣たちが使命され、ステージにあがり、直接回答をしていく。これも相当にハキハキとしたものだ。

パリ最新情報「記者の質問に首相や大臣たちが真剣に答え続ける生放送の迫力」



ドイツやイギリスなどもだいたい同じ感じだと思う。
今、日本で問題になっているような、首相の声が届かない、というようなことはあまり聞かない。はぐらかすと、ジャーナリストが一斉に文句を言うので、その辺の駆け引きも、政治が国民に近い印象を受ける。

もちろん、筆者などは両手放しでフランス政府の政策を支持してはいない方だが、ジャーナリストの無礼な質問にも真剣にこたえて、国民を納得させようとする姿勢には時々、だまされても仕方ないな、この説得力じゃ、と思う瞬間もある。
政府が何を考えているのかを国民に届けるのが首相や大臣の仕事であるならば、フランスの政治家たちは一応の合格点ではないか。
その先は、もう一つの問題として…。
それでも医療従事者や憲法学者などはフランス政府の方針をかなり厳しく批判するし、国民にも様々な意見がある。
けれども、ジャーナリストの質問にはすべて、相当な時間を割いて、回答していく。
ジャーナリストの質問の中には、国民の声を代弁しようとするがあまり、少し辛辣なものもある。しかし、それに背を向ける政治家はいない。

パリ最新情報「記者の質問に首相や大臣たちが真剣に答え続ける生放送の迫力」



さて、会見はまだ続いているが、カステックス首相が発表したロックダウンの解除について、以下まとめてみた。

まずは、大統領が宣言したように12月15日、予定通りロックダウンは解除されることになった。
編集部では先の最新情報で、再延長の可能性もありえるかも、と書いた。
たしかに、ロックダウンは予定通り解除されることになったが、しかし、首相の話しを聞いている限り、この解除は形だけのもので、実際は、あまり変わらないのではないか。
ロックダウンの解除と同時に、夜間外出禁止令が再び発令されることになった。外出が禁止されるのは、20時から、翌朝6時まで。夜間の仕事などは例外となる。

パリ最新情報「記者の質問に首相や大臣たちが真剣に答え続ける生放送の迫力」



日中の外出時に、許可証を持たなくてよくなったのはいいことだが、20時以降外出できないというのは、スーパーや商店などに影響が出るだろう。
また、仕事後(商店など)の帰宅、犬の散歩は可能だが、夜間外出禁止時間中の外出にはロックダウン時と同じ証明書の携帯が必要となる。

フランス人にとって一年を通して一番大切な行事、家族と過ごすクリスマス(12月24日から25日)のみ夜間外出禁止令は適用から外されるが、友達と集まってパーティーをする大晦日は夜間外出禁止令が適用される。(これまでは31日は制限なく騒げるはずだったが、クリスマスのみとなった)
12月15日以降も大人が集まれる人数は6人までと制限が続く。
映画館、美術館、コンサート会場などの再開は3週間延長され、1月7日まで閉鎖が続くことになった。

最後に、オリヴィエ・ヴェラン健康相が登場し、「クリスマス前に家族全員でPCR検査をして集まろうとしてる人が大勢いるようだが、それをしてもリスクゼロにはならないですよ。なので、貴重な検査キットを無駄にしないで。ウイルスは潜んでいるので予防措置を守ることはとても大切なんです」といつもの優しい口調で締めくくった。(井)

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