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パリ最新情報「トランプ関税の余波、フランスで米製品ボイコットの構え」 Posted on 2025/03/23 Design Stories  

 
米国のトランプ大統領が、EU産ワインやシャンパン、蒸留酒に200%の関税を課す可能性を示唆してから一週間あまりが経った。これは、EUによる米国産ウイスキーの関税引き上げ計画への報復措置だ。EU側の関税発動はホワイトハウスとの交渉のため4月中旬まで延期されることになったが、この動きに衝撃を受けたフランスでは今、「アメリカ製品をボイコットする構えがある」との声が高まり、報復の連鎖が続いている。

国民の消費行動において、すでに影響が出はじめているフランス。というのは、3月13日から16日にかけて行われた仏ディスキュルヴ社の調査で、64%のフランス人が「すでにアメリカ製品を買うことをやめた、またはその準備ができている」と回答したためだ。
 

パリ最新情報「トランプ関税の余波、フランスで米製品ボイコットの構え」



 
こうした不買運動は、ほかの社会運動と同じように「政治的表現の手段」になりつつあるのだろうか。今回の調査では、25%のフランス国民がすでに特定のアメリカ製品を避けていることが分かっている。主な対象は、アメリカ発のファストフードや食品、飲料など。さらにもし本当に200%の関税が発動されれば、その影響は自動車産業にまで及ぶ可能性があるという。

ディスキュルヴ社によれば、フランス国民のこうした姿勢が今後も続くかどうかは別として、“不買運動が確固たる抗議行動の一つになりつつある”とのこと。たしかに、2019年にトランプ大統領がはじめてフランスワインに25%の関税を課すと発表した際には、今回よりも多くのフランス国民(77%)が「アメリカ製品をボイコットする」と答えていた。バイデン政権下でこの動きはいったん落ち着いたものの、今のフランスの消費者たちは自らの購買力を通して、米欧間の関係に影響を与えようとしているのだ。
 



 
フランスの消費者たちは、政治や経済の決定に対してもはや受け身ではなくなっている。不買運動もそうだが、フランス国産品や企業に対する透明性への要求など、組織と消費者の対立もこれまでになく強まっている印象だ。皮肉なことに、そうした消費者側の結束は、国際関係の緊張が高まるたびに強まっているようにも見える。

とはいえ、アメリカ製品の不買運動がフランス経済にとって好ましいかといえば、必ずしもそうとは言えない。アメリカ企業のフランス法人には、数十万人のフランス人が雇用されているからだ。さらに、アップル、ネットフリックス、アマゾン、各SNSといったアメリカ発のオンラインサービスは、フランス人の生活にも深く根付いている。イデオロギー的な反発はあっても、それらを完全に手放すのは現実的には難しいのではないか。
 



パリ最新情報「トランプ関税の余波、フランスで米製品ボイコットの構え」

 
また今回の調査では、70%のフランス人が今後アメリカ製ではなく、国産の食品・外食サービスに切り替えていきたいと答えている。しかし完全にフランス産の食事に切り替えるとなると、より多くの費用を支払うことも受け入れなければならない。物価高により購買力が落ちている今の現状では、フランスの人々がそれに備えているとは言い難い。

3月21日のフランスメディアでは、フランスのワイン業界は今、アメリカへの輸出に向けてすべてが停止し、すべてが保留の状態にあると報道された。アルザスのワイン生産者にいたっては、トランプ大統領の発言の数時間後、アメリカ側の顧客から「すべてが明確になるまで待機する」とのメールを受け取ったという。
こうしてフランスの特産品が大打撃を受けるかもしれない現状に、国民のボイコットの意思は固い。一方で、アメリカのサービスに強く依存しているという複雑な現実もある。周囲では感情的に反応する人も増えているが、まずは今後の展開に注目したい。(大)
 

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