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パリ最新情報「欧州で波紋を呼ぶコオロギパウダー、EU委員会による販売認可で」 Posted on 2023/03/11 Design Stories  

 
2022年2月、EU(欧州委員会)で、コオロギを食用昆虫としての商業化が可能だという決定がなされた。
欧州委員会は2021年以降、冷凍、乾燥、粉末状態のミルワーム、トノサマバッタをすでに食用原料として正式に承認し、EU圏内での販売を許可している。
今回はこれにコオロギが加わったことになるが、23年1月にはさらに、コオロギパウダー(コオロギを脱脂した状態の粉末)の市場投入を5年間許可する旨を発表した。
そのため1月以降、食品ブランドは、ドライビスケット、シリアルバー、ソース、ピザ、豆・野菜料理、代用肉、パン、ナッツ・油脂類、チョコレート菓子など、特定の製品の組成にコオロギパウダーを使用することが認められた。

しかし、欧州委員会はあくまで販売を許可しただけであり、食品に昆虫を「必ず入れる」「知らずに食べてもよい」と決定した事実はない。
またコオロギの粉末が含まれていることは、原材料のリストに表示しなければならず、これを含む食品のラベルには「poudre d’Acheta domesticus (grillons domestiques) partiellement dégraissés」の文字と、アレルギー反応の可能性を表示する必要がある。
 

パリ最新情報「欧州で波紋を呼ぶコオロギパウダー、EU委員会による販売認可で」



 
ただ昆虫の消費は、フランスおよび欧州でも波紋を呼んでいる。
地球温暖化問題を解決する代替たんぱく質としての声もあるが、ほとんどの人が拒否反応を示しており、SNS上では日常的に使う商品に昆虫パウダーを含めないでほしい、スーパーでは表示を見れるから良いとしても、将来的にブーランジュリー(パン屋)が原材料を開示しないままパンを販売する可能性も出てくるのでは? などと否定的な意見・心配の声が目立つ。
またフランスでは昆虫食は非常にニッチな分野にとどまっており、これらの製品はほとんどが動物の飼料として使用されていた。
 

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そしてイタリアでは3月初め、EUの決定を受け、伝統的なナポリピザにコオロギパウダーを入れお客さまに(実験的に)試食してもらい、その感想を集めたピッツェリアがあったという。
しかし「受け入れられない、恐ろしい」との意見が相次ぎ、最終的に店主は「今回は伝統的なピッツァを守るために、このような挑発行為を行おうと考えました。
将来、どのピッツェリアもこの小麦粉を材料として考えることがないよう願っています」と伊メディアに対して述べた。
 



パリ最新情報「欧州で波紋を呼ぶコオロギパウダー、EU委員会による販売認可で」

 
欧州委員会が認可したコオロギパウダーの市場投入は5年間有効で、声明の中では「使用はごくわずかな食品業界で」と述べている。
なお使用量も定められており、例えばシリアルでは製品100gあたり3g、ビスケットでは1.5g以下のコオロギパウダーの使用が限度となっている。
しかしながら今回の決定には否定や誤解が相次ぎ、欧州委員会への風当たりが強まる結果になった。(チ)
 

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