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パリ最新情報「新型コロナウイルス、1年経ってわかったこと、まだ未知のこと」 Posted on 2021/04/15 Design Stories  

新型コロナのパンデミックがはじまり1年が過ぎた。
医療が進んだ21世紀だというのに、世界が未だコロナ禍から抜けられないばかりか、変異株の出現でいっそう酷い状況になっているなどとは、去年の私たちには到底想像できなかった現実である。

世界中の全ての科学論文を検索できるサイト上には、発表されているものだけで12万件以上のCOVID論文が掲載されているという。
そのため、「ウイルスの仕組み、構造、体内に侵入して感染した細胞で増殖する方法など、ウイルスに関する理解は大きく進んでいる」と、パスツール研究所のオリビエ·シュワルツ博士は語っている。
その研究により、ウイルスが活発に繁殖すると、突然変異を起こす傾向があることがわかったのだ。

ウイルスがすでに感染している免疫集団に遭遇したり、弱いながらも抗体を持った人に遭遇した場合、そのウイルスは生き残るために感染力を高め、集団の中でより強く広がるように変異する、という。
英国株を例にあげると、コロナウイルスを囲むスパイクの付着力が非常に高く、従来型のウイルスより体内の細胞に入りやすい。
科学界では世界中でいくつも認められた変異株のうち、とくに、この英国株、ブラジル株、南アフリカ株が危険であると要注意されている。
※特にブラジル株は危険度が高く、昨日(4月13日)よりフランスはフランス=ブラジル間の飛行機の欠航に踏み切った。

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感染に関して新たにわかってきたことがある。
今年1月にアメリカで発表された研究によると、物に付着したウイルスから感染する確率は0.05%以下なのだという。
手洗いが推奨されてきたが、実はそれよりも、飛沫やエアロゾル(空気中に浮遊する微小の粒子)による感染のほうが確率が圧倒的に高いということが研究でわかってきた。
「換気の悪い閉鎖された場所で大規模クラスターが起こっている」と、パリ、サン·ルイ病院の感染症医師も説明している。

去年の今頃、フランス当局は「感染していない人のマスク着用は意味がない」と繰り返し、手洗い、物の消毒を促し、エアロゾル感染のことを軽視してきた。
しかし、すでに2020年4月には、中国のレストランで起こった集団感染をきっかけに行われた調査で、気密性の非常に高い現代の建物が感染に問題を抱えていることが明らかになっている。
エアロゾル感染は1~2メートル離れた場所で、長時間にわたって感染が行われることもわかっている。
一方、屋外ではそのリスクはぐんと低くなり、極端に言うと、感染した人の飛沫を浴びない限りはほぼ感染することはない、とされている。

フランスも昨年秋くらいから「換気の大切さ」を繰り返し警告するようになったが、それは、ドイツのメルケル首相が「窓を開けることが一番安く、効果的な対策だ」という発言に由来する。
ドイツは公共施設の換気に約5億ユーロ投入することを決定している。
マスク着用が予防措置の重要な鍵となっていることも証明された。
マスクを外す会食が感染源の多くを占めていることも長期的に行った研究結果から明らかになっている。

パリ最新情報「新型コロナウイルス、1年経ってわかったこと、まだ未知のこと」



症状についてもいろいろわかってきている。
去年まで、頭痛や喉の痛みといった風邪に似たコロナの症状を見逃していた。
コロナには人によって非常に軽度のものから重度のものまで症状がさまざま存在し、それが原因で感染を拡大させてしまった。
それに加え、一番人に感染させやすいのが症状の出る48時間前ということも感染を広げる重要な一因となっている。

治療に関しては、酸素療法やコルチコイド療法など、重症患者の治療法が確立し、多くの患者が人工呼吸器を回避することができるようになった。
それにより、重症患者の死亡率は30%にまで下がったという。

ワクチンの登場も非常に大きい。ワクチンは重症化を防ぐだけでなく、感染も防ぐことが証明されつつある。
1回の接種(2回接種が必要)でもその効果は大きく、重症化のリスクを減らす割合は接種していない人と比べ約90%(ファイザー、アストラゼネカ)低いという。
空気中に浮遊する微小の粒子、特にファイザー社とモデルナ社のmRNAメッセンジャーワクチンは無症状患者のウイルスも防ぎ、感染自体をストップさせることができるということも明らかになってきている。



しかし、まだまだ未知のこともたくさんある。
まずは、このウイルスの起源である。
中国の武漢の市場が起源、コウモリが持つウイルスが他の動物を介して人間に感染したと言われているが、WHOの調査後も謎は残ったままである。
これだけ進んだ科学でも説明しきれないのがこのウイルスの起源なのである。

もう一つ、医師や科学者たちを悩ませているのは、地域別に不均一に感染が広がるということ。
フランスでは第一波、第二波、第三波と、ある一定の地域の感染が極端に酷くなるという現象が起きている。
現在も、なぜかとある特定の地域(かなり狭い範囲)で、南アフリカ株が拡大していたりする。
気候や地形に問題があるのか、他に理由があるのか、医師たちもその理由がわからず、頭を抱えている。
感染ルートが明らかになっている感染者が全体のわずか45%にすぎないことからも、この不均一な感染拡大の解明を困難にしているのだ。



それでは、免疫はいつまで続くのだろうか。
専門医たちは「自然免疫(感染時)やワクチンによって続く防御の時間は未知である」と考えている。
さらに問題なのは、この免疫が変異株によって揺らいでいることだという。
たとえば、南アフリカ株のように、抗体による部分的な免疫逃避を引き起こす変異株には、ワクチンを修正していかなければならない。

ワクチンによってウイルスの蔓延を抑えることができることはわかっている。
しかし、ウイルスの蔓延を極力減らすのを目標とするか、ゼロ・コロナを目指すかにもよるが、パンデミックが継続するかどうかは、このウイルス除去のレベルにかかっている。
「どんな流行もいつかは終わりを迎えるが、その時期はわからない」とパスツール研究所のオリビエ·シュワルツ氏は断言している。
ワクチンで国民全体にある程度の免疫がついたとして、まだ、その後も波やさざ波があるのか?
それは、今現在、この世界の誰にもわからないことなのである。(井)

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