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パリ最新情報「フランス、2023年より切り花の原産地表示へ。花を巡る透明性を追求する」 Posted on 2022/10/07 Design Stories
「スローフラワー」という考えがフランスで少しずつ浸透している。
これは、スローフードの定義と同じように、エシカル・サステナブルな方法で生産された旬の花を、産地近くに住む消費者が買おうとする取り組みだ。
フランスでは切り花の9割近くが輸入によるものである。
そのため、このスローフラワーの目的には地産地消を増やすだけでなく、花の過剰栽培が環境にどのような問題を与えているのか、また輸送時のCO2排出量の多さを再考するという狙いがある。
そんな動きがある中で、フランスでは2023年6月より切り花の産地表示が義務化されることになった。
つまり、今後は肉や魚、野菜や果物と同じように、花束に使われる切り花がどこで生産されたかを消費者が明確に知ることができるようになる。
フランスはフラワーアレンジメントの本場であるが、使われる花のほとんどは南米、東アフリカ、オランダ等から輸入されたものであるという。
中には長い輸送時間に耐えるため冷凍される花もあるといい、その際のCO2排出量は国内で生産される花の30倍にもなるとのことだ。
フランスは1950年代までは欧州一の生産国だった。
しかし、国内の二大産地と言われたイル・ド・フランス首都圏とコートダジュール地方では、バラ農園やシャクヤク畑の代わりに建物が軒並み建設され、その順位が大きく下がってしまった。
ただ、仏花屋組合会長のパスカル・ミュテル氏は、「輸入国によって花の品質が異なるとはいえ、フランスでの花の生産量は国内需要の8%に過ぎず、国外からの仕入れをすべてストップすることは考えられない」と述べている。
産地表示義務化にはあくまでも花屋における”透明性”を示す目的があって、フランス産の花を無理に押し付けるものではないとした。
また重要なのは、消費者への真摯な情報開示であり、そしてこうした変化がトレーサビリティ(モノの動きの最初から最後までを確認できる状態)の知識向上へ繋げることでもあるという。
今後、フランス産の切り花に至っては、詳細な産地表示のほか生産者の名前も付け加えられる。
ただやはり、先述したようにフランスにおける花の生産者は、農作物に比べれば非常に少ない。
需要がいちばん大きいバラもほとんどが輸入されているといった現状だ。
しかし、大量の燃料・化学肥料を使用しての温室栽培を良しとしないフランスの利点は、四季折々の花を販売し、少ないながらも消費者に季節を届けられることにあるだろう。
フランス産の花だけを販売するオンライン花屋「ムッシュ・マルグリット」の創業者バンジャマン・ペロ氏は、今回の義務化は仏生産者にとって非常に良い機会だと語る。
「本来は冬にバラがないように、春一番のミモザ、5月のシャクヤクなど、季節感を味わってほしい。今後そうした顧客からの需要が増えれば、新たな農家が花を植えるきっかけになる」とした。
フランスではエコロジカルな食品が当たり前の選択肢となった。
2023年からはようやく切り花を巡るトレーサビリティも追求されるようになるのだが、今回の義務化が花の廃棄物削減にも繋がっていくと良い。(セ)