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パリ最新情報「フランス、2024年から生ごみの堆肥化を義務付けへ。廃棄物を社会に還元」 Posted on 2022/07/29 Design Stories
家庭ゴミの約30%の割合を「生ごみ」が占めているフランス。
そんなフランスでは、2024年1月1日から全ての国民に生ごみの堆肥化が義務付けられている。
これは、フランスにおける食品廃棄物対策法の規定の一つだ。
よって国民は、2024年より自宅に処理BOX「コンポスト」を置くか、自治体が公共空間に設置したコンポスト容器に生ごみを預けなければならなくなる。
コンポストに入れて良いごみは、調理で出た生ごみ(野菜、果物、卵の殻など)、食べ残し、使用済みティーバックやコーヒーフィルターなど。
フランスでは、住民一人当たり年間85キロの生ごみを捨てていると言われている。
しかし分別して回収することによって、土を豊かにする天然肥料として利用することができ、また肥料をバイオガスに変換することで、公共交通機関のバスの動力源などにも利用できるという。
ただこの処理法は、パリ市を中心にフランスの各地ですでに適用されていた。
自治体が住民にコンポスト容器を無料で配布したり、助成金を出したり、コンポストに関するイベントを開催したり…。
首都パリでは2020年の秋くらいから収集所がどんどん増えており、コンポスト容器がマルシェやBIOショップの軒先などに取り付けられるようにもなった。
もちろん「コンポストは有益だと分かっていても、面倒だし匂いが気になる」、といった意見もある。
しかしパリ市ではこのコンポスト容器の購入が助成金対象となっているため、比較的分別を始めやすい環境が整っていると言える。
驚くのだが、パリ市はミミズの入ったコンポストを無料で配っているとのことだ。
これは容器に土とミミズを入れて、その中に生ゴミを入れていくだけでミミズが食べて有機肥料にしてくれるというもの。
フランスの地方ではこの方法が主流だというが、そもそもミミズに抵抗がある人もいるし、ミミズにニンニクやネギ類・油ものを与えるのは厳禁だ。
ということで、匂いが気になったりミミズに抵抗のある人は、自宅の庭やベランダに容器を置かず、回収スポットに持ち込んで捨てるのが良いだろう。
公共の場に設置されるコンポストは、酸素を用いて菌を発酵・分解させて堆肥にする「好気型コンポスター」となり、蓋つきなので匂いも気にならないという。
現在、パリに20ある区のうち、コンポストを常設しているのは18の区である。
家庭で出た生ごみは好きな時に持っていくことが可能で、市の回収は今のところ週2回。
今後の計画では、2025年までにパリ市にあるすべての集合住宅・建物内にコンポスト容器を設置することになっている。
義務ともあって、コンポストはこれからますます身近なものになりそうだ。
フランス人のごみの分類が適当すぎる、というのは以前より少し気になっていた。
今でも、アパートのごみ収集所には「リサイクルごみ」「瓶」「その他」しか分類がないのだが、明らかに違うごみが混ざっているのをよく見かける。
歩道ではすぐそこにごみ箱があるのに、目の前にマスクや食べ残しの容器が捨てられていたりと、残念な光景はなかなか無くならない。
生ごみの堆肥化を義務とする政令が、環境保護だけでなく国民の意識向上につながれば良いと感じた。(内)