欧州最新情報
パリ最新情報「サロン・デュ・ショコラ2021パリ、開幕!」 Posted on 2021/10/30 Design Stories
10月28日、世界的なチョコレートの祭典「サロン・デュ・ショコラ2021」がスタートした。
1995年にパリで誕生し、2002年からは日本でも開催されているサロン・デュ・ショコラ。
去年はコロナ禍でパリ開催がキャンセルとなったこともあり、今年は初日から盛大な盛り上がりを見せた。
チョコレートは世界中の人々が愛するスイーツだが、フランス人のショコラ愛は群を抜いたものがある。
日本人のチョコレート摂取量は一人あたり年間約1.9kg。
それに比べフランス人は約7kgというから、その差は歴然だ。
会場には、そんなフランス勢のショコラトリーを中心に、全世界から一流のショコラ職人やブランド、最高級のチョコレートが集まった。
宝石のようなチョコレートが並ぶほか、期間中(10月28日から11月1日)はショコラティエによるデモンストレーション、ワークショップ、書籍販売、チョコレートファッションショーなども行われる。
また、販売やショーだけでなく、会場ではショコラ・アートの展示も同時開催。
アートを重んじるフランスらしい作品ばかりで、もはや「彫刻」と言えるほどの力作が集まっていた。会場がサロン・デュ・ショコラでなければ、チョコレートで出来ていると誰も気づかないかもしれない。
国別ではフランスが一番多かったものの、近隣国のイタリアやスイス、ベルギーのショコラトリーも参加し、その国らしいパフォーマンスを見せていた。
例えばベルギー・ブリュッセル発「Valentino chocolatier」のブースでは、ビールとチョコレートのテイスティングコーナーもあった。
ベルギーのアンバービールとビターチョコレートは相性が良い、とのことで、訪れた人と楽しそうに乾杯していたところも微笑ましかった。
また、イタリアのショコラトリー「chocopassion」のチョコレートはイタリアらしい造形美にあふれていて、フランスにはないようなデザインが多く並んでいた。
スイスのチョコレートには、豊富な乳製品を使った「ミルクチョコレート」が多く、フランスは小粒で職人の技が光るものが多い。
一方、イタリアのチョコレートはナッツ類の生産が盛んということもあって、「ヘーゼルナッツ」をふんだんに使っているのが特徴だ。
同じチョコレートとはいっても、一粒にその国の歴史や文化が隠されている。
こういった国際的なサロンで食べ比べをして、直接プロから話を聞けるのはやはりありがたい。
フランスの飲食店が再開してから5か月近く経つが、大型国際見本市の再開はつい最近の9月から。
今回のサロン・デュ・ショコラも、ヨーロッパ以外の国からの動員は難しいものであったと思う。
コロナを警戒しつつではあったが、ここで久しぶりに「オフラインの熱量」を感じることができたのは嬉しかった。
そしてアジア勢で唯一の出展となったのが、日本(京都)のチョコレート専門店「dari k(ダリケー)」である。
「dari k」は、今まで発酵していないために品質が上がらず、安く取引されていたというインドネシアのカカオ豆に着目。
今回、「dari k」はカカオ豆を挽く画期的なマシンと共に出展し多くの来場者をどよめかせていた。
これは世界初のマシンで、「カカオ豆をその場で挽いて即座にチョコレートにする」ことができるのだとか。
通常、カカオ豆をチョコレートにするには、数時間~数十時間に及ぶ過程が不可欠だったが、その場で作業、目の前で提供できるまでに時間を短縮したという。
味はもちろん素晴らしく、砂糖の量を自身で調節したり、100%ハンドメイドのデザート作りにも挑戦できたりと良いことづくめだ。
また、「dari k」は大阪のマイクロ波化学株式会社と共同で「低温特殊焙煎技術」も開発。
美味しさのほかに低温で焙煎することで、通常に比べて1.4~2倍ものポリフェノールを摂取できるそうだ。
「すべて無駄にしない」というカカオ豆へのリスペクト、そしてチョコレートのさらなる可能性を広めていた日本のブース。
こうして日本のテクノロジーを世界に知らしめた形となった。
会場となったポルト・ドゥ・ヴェルサイユ見本市会場は、幕張メッセやビッグサイトのように、年中さまざまなイベントが開催されている。
どの展示会でも最先端のトレンドを追うことができ、活気にあふれていて、一日中いても飽きないものだ。
しかしサロン・デュ・ショコラはきっと、多くの笑顔を見ることができる一番の展示会なのではないだろうか。
フランス人の多くがチョコレートを「péché mignon(ペシェ・ミニヨン)」(=辞められないもの、ちょっとした楽しみ)と捉えるように、チョコレートは小さな幸せを運んでくれる。
来場者だけでなく、ショコラティエの情熱を肌で感じた2021年サロン・デュ・ショコラであった。(セ)