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パリ最新情報「パリのチーズケーキ旋風。チーズ大国に変化が訪れる」 Posted on 2022/05/15 Design Stories
チーズ大国、スイーツの都、フランスには食にまつわる色々な呼び名がある。
しかし、チーズとデザートは今まで決して組み合わさることがなかった。
日本やアメリカで愛されるチーズケーキが、フランスでなかなか定着しなかったのである。
ところが近年のパリでは、チーズケーキを扱うショップがどんどん増えているという。
フランス人との会話でよく聞くのが、「甘いチーズは受け入れ難い」という意見だ。
特に年配のフランス人に多い。
彼らにとっては、“チーズ=しょっぱいもの”というのが一般的なのである。
ただここでもジェネレーションギャップが現れた。
今の若いパリジェンヌのあいだでは、チーズケーキがちょっとしたトレンドになっているのだ。
では、チーズ大国に住むフランス人が作るチーズケーキとは?
有名パティスリーから街のパン屋さんで出されている、バラエティ豊かな姿をご紹介したい。
ジャン=ポール・エヴァンはショコラティエとして有名だが、フランス国家最優秀職人章を受賞した、名誉あるパティシエでもある。
「マズル・ターフ」(ユダヤ語でおめでとう、の意味)と名付けられたチーズケーキは、ジャン=ポール・エヴァンでも看板スイーツとなっている。
とても軽く、ふわふわなスフレ風ケーキで、1ピースがとても大きい。
軽さの秘密は、脂肪分ゼロのfromage blanc(フロマージュ・ブラン)を使って作られているからなのだそう。
甘さは控えめで、エアリーな食感が楽しめる上品なチーズケーキだ。
ルーブル美術館近くのBO&MIEは、パリで大ブレイク中のパン屋さん。
午前中から行列ができるほどの人気で、ヴィエノワズリー(甘いパン)、バゲットサンドイッチ、ケーキの種類も圧倒的に多い。
品質の高い材料を使用し、100%ホームメイドで提供することをモットーとしている。
数あるアイテムの中でも、BO&MIEが「シグネチャースイーツ」としているのがチーズケーキである。
こちらはバニラ風味のフロマージュ・ブランを使用しており、ビスキュイの味もしっかり、密度が濃い。
人気なだけあって、飛ぶように売れていたのが印象的だった。
パリだけではない。
郊外のパン屋さんでも、チーズケーキを販売するところが増えてきた。
写真はマンゴーのチーズケーキ。
ほんのりチーズの味はするものの、パッションフルーツの風味が強く、アレンジが効いている。
郊外では、こうして自由なレシピでチーズケーキを披露するパン屋さんがとても多い。
冷凍食品で有名なピカールにもチーズケーキがある。
こちらはシナモンが香るビスキュイに、レモン風味のチーズケーキ生地を重ねて焼き上げたもの。
先の3つより濃厚で、日本の食感に一番近い。
数十年前にはあり得なかった光景が、こうしてパリのあちこちで見られるようになった。
最近では13区に日本の人気店、パブロがオープンし、「チーズケーキ・ジャポネ」としてパリの情報誌でも紹介されている。
フランス人の「チーズはチーズ」という概念を覆す、チーズケーキの人気ぶり。
国際化が進むパリの今を象徴するような、新たなトレンドであった。(ル)