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パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」 Posted on 2025/01/08 Design Stories  

 
パリの中心部に、初めてのチーズ博物館「Musée vivant du fromage」ができたというので、行ってきた。
チーズ博物館がオープンしたのは、2024年6月のこと。フランスにはすでにカマンベールチーズ博物館など、その土地に特化した専門的なチーズ・ミュージアムが存在するが、「フランスのチーズ文化」を総合的に紹介する博物館が誕生したのは、意外にもこれが初めてなのだそう。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※正式名称は「生きたチーズ博物館」。チーズを“生きたものとして感じてほしい”という思いから



 
場所はセーヌ川の中州で、パリらしい趣が残るサン・ルイ島。12月に再開したノートルダム大聖堂からも近い、素敵なカルチエだ。何でもこの島は昔、「牛たちの島(l’île aux Vaches)」と呼ばれていて、辺り一面が牧草地に囲まれていたという。現在ではその面影はまったく残っていないものの、チーズと縁のあるサン・ルイ島に博物館が誕生したのは、興味深い発見だった。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※サン・ルイ島の雰囲気

 
とはいえ、新しくできたチーズ博物館は、小さい。アートギャラリーのようなエントランスを抜けると、すぐに何十種類ものチーズが並ぶギフトショップが現れる。チーズの香りに包まれながらの博物館体験は、他ではほとんど味わえないかもしれない。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※さすがフランス!と思える、豊富なラインナップのチーズ



 
さらにチーズ博物館では、ガイド付きの見学が必須になっている。言語はフランス語、もしくは英語。自由に見て回れる美術館とは違い、約一時間ほどじっくりと説明を聞く必要がある。しかし最初にお伝えしておきたいのは、その一時間が「あっという間だった」と感じるほど、内容が充実していたということだ。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※フランスのチーズ産地を示すマップ。ボタンを押すと光る仕組み。最新のデジタル技術と、木のぬくもりがとても良くマッチしている

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※チーズ作りに使われていた道具の展示



 
ここでは、フランスにおけるチーズの歴史や科学的な知識、そして製造過程について、インタラクティブな展示を通してみなで学んでいく。
もちろん、参加者はただ説明を聞くだけではない。途中でガイドの方から「フランスにはチーズの種類がいくつあると思いますか?」といった質問が投げかけられる場面もあり、自然な対話が生まれるユニークな見学になった。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

 
特にフランスらしいと感じたのは、ガイドさんの質問に対して、挙手して発言する人がとても多かったということ。遠慮や恥じらいはまったくない。こうした光景は他の場所でもたびたび目にするが、今回はフランスの人々が心から大切にするチーズへの興味と情熱が、一瞬に凝縮された特別な時間だったと思う。
 



パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

 
終盤では、「フレッシュタイプ」「白カビタイプ」「青カビタイプ」「シェーブル(山羊チーズ)」「ウォッシュタイプ」「ハードタイプ」と、製法別に6つのタイプのチーズを視覚と味覚の両方で体験する。チーズの試食では食べ比べもでき、それぞれの特徴や風味の違いをじっくり楽しむことができた。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※参加者は4種のチーズを食べ比べ

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※フランス人参加者から一番人気だったのは、熟成ハードチーズの「コンテ」



 
こうして、知れば知るほど奥深いチーズの世界。その魅力を体感できるチーズ博物館は、フランス・ボジョレー出身で、チーズ作りや教育をライフワークとするピエール・ブリッソンさんによって設立された。
博物館の目的は2つある。フランスの豊かなテロワールを紹介することと、チーズ作りを志す人々を増やすこと。また、酪農家や小売店など、多くの人々が関わって初めてチーズが私たちの手元に届くという事実を伝えることも、大切だという。
 

パリ最新情報「パリに新オープン!『チーズ博物館』は、試食つきの美味しいミュージアム」

※チーズの製造過程を「マジックウォール」で。木製のタッチパネルが新しい

 
「小さいけれど、熱い博物館」。これが今回訪れたチーズ博物館の印象だった。
フランスの人々が熱意を注ぐ対象は、チーズ以外にもたくさんある。しかしこれほど豊かな「文化」を持つものは、ワインやバゲットと並んでもそう多くはないだろう。最新のインタラクティブ展示があるミュージアムとしても、ぜひ一度は訪れてみたい。(コ)
 

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