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パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」 Posted on 2024/02/06 Design Stories  

 
パリの看板、ブティックのファサードに見る、素敵な文字。
これらの文字を描く「文字画家」という職業が、パリで復活の兆しを見せている。
 

パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」

 
文字画家はかつて、パリになくてはならない職業だった。
黄金時代は19世紀末〜20世紀の初頭にかけて。「ル・パントル・オン・レトル(le peintre en lettre=文字画家)」と呼ばれた彼らは、看板の装飾や、壁面に広告を描くことのできる“唯一の専門家”として、パリで大活躍していた。
しかし新しい印刷技術やプラスチックの登場により、文字画家は少しずつ姿を消すことになる。
1970年代になると、その座を粘着シールや電飾看板に奪われてしまった。
 

パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」



 
そんな文字画家たちが再び脚光を浴びたのは、2020年代に入ってからだった。
近年のフランスでは、刺繍や織物、陶磁器といった伝統工芸が息を吹き返している。
使い捨て文化をなくすとともに、職人たちの技を後世に伝えていこうとする一つの風潮だ。
文字画家が再注目されたのは、それに加えてコロナ禍、3度続いたロックダウンがきっかけだった。
パリのブティックやホテルは閉店のあいだ、改装に踏み切るところが多かった。
その一部に若手の文字画家が起用されると、インスタグラムでまず火が付き、後にフランスのTV番組でも紹介されるようになった。
 

パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」

※パリジャンの文字画家、ジュリアンさんのインスタグラム。
https://www.instagram.com/p/CnPY5FPtBDM/?igsh=NzdwZjFpa3k0aDk0



 
現在、フランスには約60人の文字画家がいるという。
案件はビストロ、ホテル、映画館、香水店、画廊などさまざまだが、改装や新規オープンのほかに、ブランドのポップアップストア、船や海水浴場の案内板まで描くことがあるそうだ。

特に首都パリでは、新世代の文字画家たちが活躍している。
彼らは師匠のもとで学んだあと、独立し、SNSを駆使しながら文字画家としての仕事内容を発信し続けている。
そのデザインはとてもフォトジェニックで、アイデアにあふれたものばかりだ。
伝統を守りつつ、現代にも馴染む色やフォントでパリの街を彩っている。
 

パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」

https://www.instagram.com/p/B8viRhei8MP/
※パリでよく見るゴールドの文字。ゴールド文字は手描きが一番美しいのだそう。ニスで保護されるため時間が経っても色あせることはない。



 
忍耐力が求められるという文字画家は、一日4〜5時間、ほとんど外で作業をする。
パリの場合は文字においても完璧な「左右対称」が求められるので、「U」や「О」のアルファベットを描くときには特に気を使うのだそうだ。
さらに冬は最も厳しい季節で、氷点下でも手袋をはめられないため指が動かなくなり、仕事を泣く泣く中断してしまう日があるという。
とはいえ、一度没頭すれば頭はスッキリし、完成後には「街に足跡を残した」という大きな満足感が残る。
 

パリ最新情報「復活した『文字画家』、パリの街に素敵な文字のアクセント」

 
「パリのあらゆるところに文字が必要なんです」
と語るのは、インスタグラムで有名になった文字画家のジュリアンさん。
彼は文字画家の未来に自信を持っているといい、師匠世代と力を合わせながら、職業の知名度アップに力を注いでいる。(こ)
 

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