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パリ最新情報「シャンゼリゼ大通りが巨大な『教室』に?!世界最大の書き取りテストが開催される」 Posted on 2023/06/06 Design Stories
6月4日(日)、シャンゼリゼ大通りが世界で一番大きな「教室」に変身した。
完全通行止めになった大通りには1700の机と椅子が並び、凱旋門の目の前には巨大な黒板も登場。
そしてこの青空教室には、フランス国内外から1,397人もの“生徒”が参加したと報道された。
今回の特別なイベントは、シャンゼリゼ委員会(Comité Champs-Élysées)によって企画された。
“世界最大のディクテ”と題し、当日にはギネスブックの審査員も現場に駆けつけたという。
※ディクテ(dictée)とは「書き取り」のこと。フランス語の朗読を聞いてその場で書き取りを行う。
実は、本来の目的はギネスブックに挑戦することだけではない。
世界新記録を樹立するとともに、教育の重要性、特にフランスに約250万人いるとされる「非識字者」を減らそうと、仏文部省の協力のもとで開催された。
つまりこれは読み書きを含む、教育の不平等をなくしていこう、という強いメッセージ性を含んだイベントなのである。
※仏文具メーカーBICも協賛し、書き取り用のボールペンが配られた。
参加者資格は、10歳以上であれば誰でもOK(無料)。
ただ事前に申し込みを行う必要があり、抽選にて選ばれるというシステムになっている。
当日はスマホのアプリ使用(カンニング)はもちろん禁止。
試験は3部門に分かれ、時間差で計3回の書き取りテストが行われた。
朗読を行う3人の「先生」たちもプロフェッショナルだった。
仏文芸ジャーナリストのオーギュスタン・トラペナール氏、仏作家のカトリーヌ・パンコール氏、元ラグビー選手で現パリ副市長のピエール・ラバダン氏の3人が登場し、朗読にはフランスの有名な3つの文学作品が選ばれた。
実はこの書き取りテストは難易度が高い。
フランスでも多くの人が「苦手」とする書き取りなのだが、これはフランス語の綴りが非常に複雑であるためだ。
耳に入ってくる音と実際のスペルはリンクしていないことが多く(簡単な例ではムッシュ=Monsieurと書くなど)、動詞の活用形などは英語のそれよりも遥かに難しい。
そのため、ディクテ(書き取り)はとてもフランス的な学習方法だと言える。
しかし青空教室においては全問正解を求めなくても大丈夫。
フランス語の腕試しとして参加した外国人もいれば、「孫の日記の添削を手伝うため」「中学生の娘の気持ちに寄り添うため」と頑張るフランス人参加者の姿もあった。
※ディクテの最終チェックは、各自で巨大なスクリーンに映し出される解答を見ながら行われた。
なお今回、シャンゼリゼ大通りで行われた世界最大のディクテは天候にも恵まれ、めでたくギネス記録に認定されたという。(大)