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パリ最新情報「今年のセップ茸は豊作の兆し。美食の季節がはじまったフランス」 Posted on 2022/10/03 Design Stories
フランスで愛される秋のキノコが今、ベストシーズンを迎えようとしている。
夏の干ばつで発育が心配されていたキノコではあったが、9月から続く雨の影響で状況は一転。
その後は順調な成長を見せ、高級食材のセップ茸が特に豊作の兆しを見せているという。
イタリアでポルチーニと呼ばれるセップ茸は、フランスでも非常に多くのファンを持つキノコだ。
国内ではボルドー地方のものが有名で、9月末からはパリ近郊のロゼールや北東部のヴォージュ地方でも収穫が始まっており、一般の人も国有林であれば立ち入ってセップ狩りを楽しむことができる。
セップ茸が順調に成長する条件としては、土の温度が15〜17℃であること、急激な温度低下や雨のあとに続く晴れ間などが挙げられ、天候差による「ショック」が非常に重要となってくる。
フランスにおける9月の天候はまさしくそれに当たり、セップ茸にとっては好条件が重なっていた。
そのためフランス北東部のヴォージュ地方では近年で最大級の3kgを越す巨大セップ茸が発見されており、見つけた親子が仏メディアに取り上げられるなどちょっとしたニュースにもなった。
しかし、フランスでは私有地でのキノコ狩りは禁止されている。
規則を破れば135〜2000ユーロの罰金を科せられるリスクがあるほか、私有地で収穫したキノコは所有者に没収される。
ただし国有林であれば一般の人は5リットル(だいたい3.5kg)まで収穫が認められており、小売業者に販売して収入を得ることも可能だ。
セップ茸の値段は質や地域によってさまざまだが、1kgではおよそ20〜30ユーロ(2800円〜4200円)となっている。
ただセップ茸には虫が入っていることが多いため、買う前にはよく観察し穴が開いていないか、中が空洞になっていないか十分な注意が必要だ。
さて香りも良く旨味のあるセップ茸は、フランスではポワレとしてよく食されている。
これはバターを熱したフライパンでガーリックとセップ茸を炒め、そこにパセリと塩胡椒を加えるだけといったシンプルなレシピだ。
さらにフランスではクリーム煮にしたり、オムレツに入れたりするほか「セップ茸のカルパッチョ」なるレシピも存在する。
こちらはスライスした生のセップ茸の上に、パセリ、オリーブオイル、レモン汁、パルメザンチーズもしくはコンテチーズを添えたもの。
牛肉や魚のカルパッチョのように、素材の味をそのまま楽しめる贅沢な方法となっている。
2022年はキノコ狩りをしたい人にとって格別な年になりそうだ、と仏メディアは報じた。
またフランスでは近年、夏の猛暑がキノコの生育にどのような影響を与えるか盛んな研究が行われている。
今年は猛暑のあとに一気に気温が下がり、長雨が各地で続いた。
そのため仏南部・アレス市の菌類学会長ヴァネッサ・ボセック氏は、「こうしたストレスがセップ茸の成長を加速させたかもしれない」と指摘しており、近年でも稀なことだと強調した。
なお今年のセップ茸は10月末まで採れるそうで、レストランでのメニューも今が旬。
人工栽培ができないセップ茸は貴重なキノコでもあるので、カボチャ、ジロール茸、ぶどうといった秋の味覚を押し上げて、現在の野菜コーナーにおける主役となっている。(内)