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パリ最新情報「コロナ禍で政治家に求められるものは何か」 Posted on 2020/07/23 辻 仁成 作家 パリ

日本政府のコロナ対策が、アベノマスクしかり、今回のGOTOトラベルキャンペーン(アイデアはいいのだけど、タイミングだと思う)しかり、なぜか国民の不安をあおるものが多いのはなぜだろう。政府の見解がぶれる原因はなんだろう。国をこうやってコロナから守るべきだと強い信念を持った中心となるキーマンが不在だからじゃないか。フランスの新しい首相に就任したカステックス氏は、ロックダウン解除のプランを考え、陣頭指揮をとった人物である。国民にはあまり知られていなかった政治家だが、いきなり先の内閣改造でそこが評価され、新首相になった。



マクロン大統領と前首相のエドワー・フィリップ氏とは考え方も速度も違った。フィリップ氏は慎重な性格で決定までに時間がかかった。マクロン大統領とはそりが合わなかったようだ。そこで、首相が交代ということになる。新しい首相のカステックス氏は、国民にはほぼ無名の存在だったが、実は、サルコジ政権を支え、実力のある政治家であった。ロックダウンの解除は、彼のプランで実行された。混乱は少なく、就任後の世論調査では国民の56%が彼を支持した。マクロン大統領の36%をはるかに上回る。一夜にして、国民の信頼を得たこの人物は、今回のマスク義務化に関しても、また即断力を働かせている。



フランスは現在、再びじわじわと感染者数、陽性率、そして実効再生産数が高まっている。けれども、日本と同じように再び緊急事態宣言を出して経済を止めることは、少なくとも、現時点では難しい。そこでマスクの公共施設(自宅以外全ての屋内)での義務化を法令化したのだけど、当初、マクロン大統領はマスクが国民に行きわたらないとして、その施行開始を8月1日と宣言していた。それをカステックス首相が12日間も早めて7月20日からにしたのだ。科学者や関係者が感染拡大を危惧している状況を受けて、カステックス首相は一日も待てないと即断した。この現状を読む力とそれを即座に実行に移せる行動力こそ、政治家に今、求められているものかもしれない。感染拡大がいちじるしいマイエンヌ地区はそれよりも4日早い、7月16日からマスク義務化の法令が施行されている。そして、昨日、政府は低所得者層、貧困層へのマスク無料配布も決定した。

今、未知の感染症との戦いの途上にある世界で、政治家に求められているのは、ぐずぐずしない国民の命と経済を一番に考えた上での早い判断力と強い行動力ではないか。特にアメリカやブラジルなどで起きている社会混乱は、政治的判断力の鈍さ、リーダーたちの判断のぶれと不勉強、もっと言えば感染症社会に対する政権の先見の脆弱性が原因のような気がしてならない。日本もこのような感染拡大の中で、GOTOトラベルキャンペーンがそこに油を注がないか、を早急に見極める判断力が求められている気がする。

パリ最新情報「コロナ禍で政治家に求められるものは何か」



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