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パリ最新情報「フランスの炭酸水、ペリエがスーパーから消えつつある。125年の歴史で初」 Posted on 2023/04/02 Design Stories  

 
フランスのスーパーやカフェのメニューから、炭酸水「ペリエ(Perrier)」が消えつつある。
ペリエの品薄は、数か月前から少しずつ始まっていた。
しかし現在では在庫ゼロというスーパーが続出しており、メニューから小瓶のペリエを下げるカフェも出てきてしまった。
こうした状況は、ペリエ125年の歴史でも初めてのことだという。
 

パリ最新情報「フランスの炭酸水、ペリエがスーパーから消えつつある。125年の歴史で初」

※スーパー「Intermarche」でも有名な緑のボトルがなくなっている



 
ペリエを管理するネスレウォーターズ・フランスは、品薄になった理由として、「ここ数か月の間で干ばつと豪雨が交互に、激しく起こったことにより、ペリエの源泉・ヴェルジェーズの湧き水が不安定な状態になってしまった」と説明する。
ただこれはペリエだけでなく、フランスおよび西ヨーロッパ全体のナチュラル・ミネラルウォーター業界に共通して起こっている現象だ。
大きな理由には他にもう一つあって、ペリエにとってはウクライナ危機による「食品用CO2不足」が特に問題だというのである。

フランスにはロザナ(Rozana)、サンヨール(St-Yorre)、ヴィシー・セレスタン(Vichy Célestins)などたくさんの天然炭酸水メーカーがあるが、大手ペリエは天然とは若干異なり、湧き水に食用の炭酸ガスを注入してスパークリン・ウォーターを生成している。
つまりペリエの生成には窒素や水素、そして何より大量のエネルギーが必要なため、ロシアの石油・ガス禁輸措置の導入以来は、ほとんどの国内工場で減産を余儀なくされてしまっていた。
 

パリ最新情報「フランスの炭酸水、ペリエがスーパーから消えつつある。125年の歴史で初」

※デパートの炭酸水コーナーでもペリエが見当たらない

地球カレッジ



 
このような現象は、2022年末のイタリアでも起こっている。
飲料水大手サンペレグリノとアクア・サンタンナに至っては、数週間にわたり自社工場を閉鎖せざるを得ない状況に陥った。
ネスレウォーターズ・フランスによると、ペリエについても似た経路を辿っており、再開には早くてあと数カ月もかかるとのことだ。

こうした干ばつによる源泉地の水枯渇問題、そしてウクライナ危機に起因したエネルギー不足は、西ヨーロッパの炭酸水メーカーに大きな打撃を与えている。
またフランスにおいてはヒマワリ油、マスタードに続きペリエが、2023年上半期の重大な欠品問題に繋がると言われている。
ネスレウォーターズ・フランスは3月末、「水資源を確保しつつ、持続可能な供給を目指すため、源泉地ヴェルジェーズの施設の近代化を図っている」と仏メディアに対して述べた。
しかしどのような方法が取られるのか、ペリエの今後の値上がりについて、そしていつ正常な状態に戻るのかについては、同社は明言を避けてしまった。
 

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折しもマクロン大統領は3月31日、「2030年までに10%の節水目標プラン」を発表している。
大統領によればフランスは今年も干ばつのリスクが大変に大きく、今夏には再び水不足に陥る可能性が高いということだ。

雨不足、河川の流量減少などにより、フランスでは水資源の確保が危ぶまれている。
事実、過去20年間では14%が減少しており、2050年にはさらに30%〜40%の水資源が減少するとも言われている。
ペリエなどの炭酸水が高級品になるのを避けるためにも、日々の節水努力が、これからのフランスではマスト事項となりそうだ。(大)
 

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