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パリ最新情報「夜勤による乳がん発症、職業病としてフランスで初めて認定される」 Posted on 2023/03/29 Design Stories  

 
3月27日、元看護師の仏女性が患う乳がんが、「夜勤が主なリスクファクターであった」として、フランスで初めて職業病と認定された。
またフランス国内ではこうした事例が過去になかったため、今回の件が先駆けとなる可能性が大いにあるということだ。

女性は現在退職しているが、フランス北東部・モゼル県(Moselle)の総合病院で28年間、看護師として勤務していた。
この間、婦人科と循環器科を兼任していた女性は週に一回以上の夜勤をしており、合計では873回に相当した。
彼女が乳がんと診断されたのは2009年のことだった。
その後は乳房部分切除術、化学療法、放射線療法、ホルモン療法などを受けなければならず、一時的に病院を休職した。
しかし復帰後も同じ労働条件で働かなければいけなかったため、女性は定年よりもずっと早い時期に早期退職を余儀なくされた。
 



パリ最新情報「夜勤による乳がん発症、職業病としてフランスで初めて認定される」

 
結果、女性は労働組合に訴えを起こすことになった。
調査には複数の専門家やがん研究所が関わったため長い時間を要したというが、最終的には「夜勤が体内時計を狂わせる一因となり、がんを促進しかねない免疫防御力の低下につながる」として、現地労組が乳がんを職業病と正式に認定した。
しかし女性の乳がんは、夜勤だけでなく不規則なシフト勤務、ライフスタイルなど、さまざまな要因が重なって発症したことも明らかになっている。
 

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仏メディアによれば今回の決定は先例となり、夜間勤務者の職業病について他の道が開かれる可能性も大きいという。
ただ現地労働組合の代表は、「今回の目的は、夜間勤務者の乳がんを“職業病”として認知してもらうことだけではない。労働条件の改善と、リスクを知って予防策を練ることが重要だ」と述べている。またこの度の認定が、企業の意識を向上させるのに役立つことを願っていると、代表は27日の発表後に追加した。
一方で仏婦人科医のアンヌ・レスール氏は、「夜勤を行うすべての女性をパニックに陥れないよう注意しなければならない」と述べる。
同氏は、考慮すべき優先的な要因は他にもあり、座りがちなライフスタイル、過剰な体重、喫煙習慣などが、依然として乳がんの主な原因となっていることを明かした。
 

パリ最新情報「夜勤による乳がん発症、職業病としてフランスで初めて認定される」



 
フランス女性の乳がん発症件数は年間6万人にもなる。
そして職業に起因するがんの数(乳がんに限らない)は、この20年間で3倍以上に増加しているとのことだ。
乳がんと夜勤の関連性が立証されたのはフランスで初めてとなったが、現在、国内ではモゼル県の元看護師と同じ症例がいくつか報告されており、各地で調査が進んでいるという。(内)
 

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