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パリ最新情報「なぜ、パリの警察は無実の黒人プロデューサーをボコボコにしたのか?」 Posted on 2020/11/28 Design Stories  

21日、夜、音楽プロデューサーのミシェルが自分のスタジオの前に車を停めた。
警官がいたので、マスクをしていなかったミシェルはとりあえず急いで歩道を渡ったところにある自分のスタジオに飛び込んだら、警官が追いかけて来て、スタジオの中まで押し入り、差別言葉を連発したあげく、ミシェルをボコボコにした。

マスクをしていなければ、職務質問をして罰金をとればいいだけの話しだが、警官三人(一人は外にいた)は玄関先で暴行をした。
ミシェルの事件は21日に起きたが、ニュースになったのは25日であった。
その二日前、23日にバスティーユ広場に仮説された難民キャンプを解体する際には警察が市民に暴行を働き、大問題になっていた。
足をひっけかけ逃げ惑う市民を倒したり、暴行する警察の映像を市民が観て激怒した直後に、3人の警官が17区という割と閑静な地区で音楽プロデューサーを暴行したのである。こちらの事件の方が先だったが、このように警官による暴力事件が続く、その理由は気になる。



世界中でBlackLivesMatter運動が吹き荒れる中、なぜ、3人の白人警官は黒人をボコボコにしたのか? 
ミシェルは警察署に連行され取り調べを受けることになるが、彼には無実を証明する証拠があった。
スタジオに設置されていた防犯カメラが全てを記録していたのである。
警官3人はミシェルが武器を奪おうとした、と嘘を証言をし、現在4か月の謹慎中である。
検察はそのビデオをもとにミシェルを即座に解放、逆に暴行した3人の警官を取り調べている。或いは、免職になる可能性が高い。
この事件に際して、フランスサッカー代表のエムバベ氏などが事件を非難、大きな衝撃が現在、フランス国民に包み込んでいる。
ここで大事なことは、なぜ、こうも黒人への暴行が続くのか、という問題であり、市民を守るはずの警官がなぜ、このような犯罪者のような行動を起こしたのか、ということに尽きる。

パリ最新情報「なぜ、パリの警察は無実の黒人プロデューサーをボコボコにしたのか?」



これらの事件が起こる直前、仏内相のダルマナン氏はテレビカメラに向かって「警察官の顔を撮影するな。彼らが危険にさらされるのを看過できない」と喧嘩腰でカメラに叫んだ。
その形相は多少のパフォーマンスはあったにせよ、内務省の焦りを反映するものでもあった。
何の焦りか、それは警官の不満を解消するための、焦りであろう。

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警官や兵士の顔をSNSに投稿するのは犯罪行為にあたると内相は訴えた。
当サイトでその主張に従い、過去記事から警察官の顔がわかる写真の削除を行った。
これに対し、一部メディアは「警察による虐待行為に晒される市民の権利を危険にさらすもの」と訴えている。
今回のミシェルの暴行事件は防犯カメラと周辺住民の撮影がなければ、彼の無実は証明できなかった。
無抵抗の罪のない黒人を意味もなく一方的に暴行を加えた警官らは、防犯カメラの証言で現在、厳しい裁きにあっている。
しかし、逆を言えば、この映像がなければ、ミシェルは完全に犯罪者にされ、社会的に抹殺されていたことになる。
なんとも恐ろしい話しで、これが自由を発明したフランスで起こった出来事とは信じたくない。
パリ市長イダルゴ氏は「あまりの衝撃を受けた、実に耐えがたい犯罪だった」と発言して、事件を非難している。

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では、なぜ、警官たちは黒人をここまで目の敵にするのだろう。それは在仏日本人にも向けられることだろうか? ジャーナリストの知人はこういう。
「彼らの肩を持つつもりは一切ないが、考えても見てくれ。パリ連続テロ事件以降、フランス全土で最高レベルの警戒となり、警察は休みもなく働かされた。重たいマシンガンを抱え、雨でも炎天下でも、コロナでも、街角に立ち続けた。去年、2019年は毎週末、ジレジョーヌ(黄色いベスト運動)が吹き荒れ、それは50週にも及んだ。その都度警察が出動している。そこに来てコロナだ。テロは終わることもなく、デモ、コロナ、と警官も人間なので、限界をとっくに超えている。しかも、テロに関しては自分たちの命も狙われている。ダルマナンが警察を守ろうと訴える理由もわかる。警察官たちからすれば、自分たちがこんなに頑張っているのに、市民は自分たちを責める。心の持って生き場がない。コロナ禍による自殺者が急増しているフランスだけど、警察官だって家族を養い生活をしないとならないし、最初の頃はマスクさえ支給されずに警戒活動をしていた。彼らの精神状態も普通じゃないんだ。ほとんどの警官はそれでも理性で動いている。でも、一部に、とくに危険な地域の警護や防衛を任されている警官たちの心理状態が普通じゃなくてもおかしくはない。彼らもまた制服を脱げば普通のフランス人なのだから。しかし、この3人の警官はアウトだ。間違いなく腹いせもあった」
(つ)

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