欧州最新情報
パリ最新情報「フランス人はなぜここまで激しくデモるのか?」 Posted on 2020/11/30 Design Stories
またまた、ロックダウンの最中、フランス全土で大規模なデモが行われ、13万人以上が集結した。
特に、パリ市のレピュブリック広場では車が燃やされ、トラックが引き倒され、警官とデモ隊が激しくぶつかり合った。
なんで、ロックダウンが緩和された、その穏やかな日に、と思う人は多いかもしれない。
けれども、それがフランスなのである。
今日までに至る流れをちょっとおさらいしておきたい。
この引き金になったのは21日に発生した黒人音楽プロデューサー、ミシェル氏への警官3人による暴行事件で、これは先にも記事にした通り、この三人は現在検察に取り調べられ、事件として扱われている。
警官らは「黒人プロデューサーが拳銃を奪おうとした」と嘘をついた。
しかし、その一部始終が防犯カメラに録画されていたのである。
この出来事がネットメディアなどで広まると、マクロン政権が治安強化のために成立を急ぐ治安法案、グローバルセキュリティ法(下院では可決されている)に反対するデモに油を注ぐ形となった。
この新法案で特に物議を醸しているのが第24条、「活動中の警察官や憲兵隊員の顔、または特定を可能にする映像をその人物の心身を損なう目的で流布することを禁止する」である。(処罰は禁固1年・罰金4万5000ユーロ)
テロなどが続いているので、政府は、「警察官やその家族を守らなければならない」と主張。パリで暮らしていると、警官や兵士のご苦労はよくわかる。しかし、ジャーナリストは「報道の自由が失われる」と強く抗議した。
この法案を巡って市民と政府が対立をしていた。
その真っただ中で、警察官による黒人暴行事件が起こった。警官は「汚い黒人」という差別言葉を連発し、何もしていないミシェルを5分にわたって殴る蹴るの暴行を加えた。
彼の顔は血だらけになった。
しかし、スタジオの防犯カメラがその一部始終をとらえていたのである。ミシェルは解放された後、こう語った。
「証拠ビデオが無かったら僕は今ここにいなかった」
この出来事が、風刺画事件に負けないくらい、フランスを再び大きく揺さぶった。
ジャーナリストに限らず多くの国民がこの法案の危険性を指摘し始めた。
ミシェルは、「いきなり暴行されだけど、相手は警察。自分は誰に助けを求めたら良いのか、わからなかった。絶望しかなかった。今日が自分の最期の日になってしまうかもと頭をよぎった。もしかしたら、この連中は偽警官かもしれないと思った」と、心境を語っている。
しかし、私たち在仏の日本人はいつも、ここで、大きな疑問を感じる。
なぜ、フランスからいつもこのような血の気の多いニュースが世界を駆け巡るのだろう、ということ。
日本の半分の人口のフランスだが、テロや、コロナ、デモ、人権問題、何かといえばいつもフランスからニュースが出回る。
しかも、血の気の多い話題ばかりなのである。
なぜなんだ?
フランスは2019年2月から50週に渡って続くジレ・ジョーヌ(黄色いベスト)デモがあり、2020年はコロナ、テロ、人種差別に対するデモが続いている。
毎週どこかで、なんらかの問題に対し、国民が声を上げている。
フランス人は自身でも認める「Raleur(全てのことに対しぶつぶつ文句を言う人)」なのだ。
しかし、言い換えれば、常に何事にも問題意識を持っている人たち、ということが出来る。
自分の人生に関わることにはじっとしていられない人たちなのである。
自分や子供たちの未来を考え、真面目に世界と向き合っている。
日本人からすると、ちょっとやり過ぎに感じることもあるのだけど、そこが、フランス人らしさ、と言えるのかもしれない。
政治と国民が近い、これがフランスなのである。
一部の過激な人たち(もしくは、騒動に便乗して日頃の鬱憤を晴らしに来る輩)の部分が真っ先に報道されてしまう、残念なところはあるけれど、そういう暴徒化した過激派の中に、一般の市民はほとんどいない。デモ隊のほとんどは真剣に問題を提起している人たちなのである。(井)