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パリ最新情報「幼い子どものスクリーン利用がフランスで急増中。政府による啓蒙キャンペーンも始まる」 Posted on 2023/02/20 Design Stories  

 
フランスでは現在、子どもたちのデジタル画面を見る機会が大幅に増え、問題になっている。
新しい調査によれば、フランスの未成年者の96%が少なくとも1つのデジタル機器を所有または使用しており、その開始年齢もますます早くなっているという。
実際にフランスでは、2歳までに約4分の1の子どもたちがすでにスクリーンにさらされているということだ。
そのため仏小児科医も保護者らに対し、「親のスクリーン利用が子どもに与える強い影響を過小評価している」、と厳しく指摘している。
 

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フランスでは10人中9人の小児科医が、子どもの気分障害とデジタルの関連性を認めている。
症状で最も多いのは彼らの怒りっぽさ、攻撃性、睡眠障害だ。
そして社交性の欠如、肥満、正しいフランス語が話せない、多動性などが後に続く。
また10代のティーンエイジャーでは全体の42%が睡眠不足であり、授業中の居眠りなども目立って見られるという。

ただ仏小児科医によると、子どもたちの睡眠不足は親にとっても他人事ではなく、自分自身もスマホ中毒になっていることが多いと警鐘を鳴らしている。
子どもには9時に寝るよう躾けるのだが、一方で親は0時近くまでスマホを見続けている。
つまり親の行動を子どもが再現することによって、悪循環が生まれているというのだ。
医師らはこれを、パンデミック後のテレワーク普及が大きく影響していると指摘する。(若い親たちの時間の潰し方が、デジタルツールに頼っていることなど)
 

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こうした問題を受け、仏政府は2月13日に「デジタル教育に対する意識を高めるためのキャンペーン」を開始した。
今後はウェブ上、ソーシャルネットワーク、テレビ番組、テレビCMなどで1カ月間キャンペーン映像が流され、実際のスクリーンから悪影響を伝える啓蒙活動が行われるということだ。
内容は、子どもたちがいるところで画面を長時間見ないようにする、子どもたちとデジタル機器の利用についてきちんと話し合う、映画鑑賞の年齢制限(PG12、R15、R18指定)、ビデオゲームの推奨使用年齢を尊重すること、などだ。

またフランスでは、国内で製造・販売されるデジタル機器に「ペアレンタル・コントロールサービス」の搭載を義務付ける法律が2022年9月5日に施行された。
ペアレンタル・コントロールとは、子どもが安全にインターネットやスマートフォンを利用できるよう、保護者がウェブ閲覧やアプリのダウンロード、利用できるサービス、使用時間などを制限すること。
「フィルタリング」がその代表になる。
これによって特定コンテンツ(テロ示唆・擁護、暴力的描写、ポルノなど)にはブロッキング措置が取られる。
またペアレンタル・コントロールサービス未搭載の場合、製造・販売業者には罰金が課せられるという。
 

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ところが現在では、こうしたツールを子どものために活用している、と答えた保護者は全体の46%にとどまっているということだ。
子どもの過剰なスクリーン利用も問題だが、20代後半〜40代前半の若い親たちにもデジタル依存傾向が見られる。
つまりこの分野でのポイントとしては、スクリーン利用を初めとした、親自身の悪い習慣が再生産されていることだと仏小児科医は問題提起している。

このようにフランスでは、青少年によるインターネットやデジタル機器の使用は他の世代と比較しても非常に高い傾向にある。
特にインターネットは、知識の習得やコミュニケーションにとって有益なツールである一方、使用に伴う危険性・問題点にも憂慮が集まり、対策や取り組みが急がれている。(大)
 

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