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パリ最新情報「AIアート展、パリで初の開催。世界七不思議を人工知能が描く」 Posted on 2023/01/14 Design Stories
パリでは今、AI(人工知能)によって作成された絵画の個展が開かれている。
場所はマレ地区の一角にあるギャラリー、「la galerie Danysz(パリ11区)」だ。
AIによる絵の個展はパリでも初開催となり、昨年12月3日から1月14日までの約40日間にわたって入場無料で公開されている。
展示されているのは7枚の絵、すなわち「世界七不思議」を表現したものである。
世界七不思議とは、古代の地中海地方に存在していたという7つの巨大建造物を指す。
なおこれは現代で言われている新・世界七不思議(万里の長城やタージ・マハルなど)とは異なり、古典古代における元祖7つの建造物を描いたものだ。
※古典古代における世界七不思議…ギザのピラミッド(エジプト)、アレクサンドリアの大灯台(エジプト)、オリンピアのゼウス像(ギリシャ)、ロードス島の巨像(ギリシャ)、エフェソスのアルテミス神殿(トルコ)、ハリカルナッソスのマウソロス霊廟(トルコ)、バビロンの空中庭園(詳細は未だに謎)。
うち、現在ほぼ無傷で残っているのは、紀元前2000年代に建築されたと言われるギザのピラミッドのみ。
※エフェソスのアルテミス神殿
人間の手によって創造された七不思議が、こうして人工知能によって描かれたことについて、自分は恐怖にも似た違和感を覚えてしまった。
その完成度があまりにも高かったためだ。
こちらはパリの若手3人組アーティスト、「Obvious」チームによって描かれた。
全員が20代のアーティストであり、2020年にはForbes誌の「世界を変える30歳未満の30人」に選ばれ、「天才」と評されたクリエイターたちである。
彼らはAIアルゴリズムを作業ツールとして選んだ。
つまり、世界七不思議にまつわる過去の文献を参考にし、1年半もの時間をかけて、正確なテキストを画像に変換するアルゴリズムを設計したということだ。(アルゴリズム…主にコンピューターにおける計算・処理手順。プログラミングに欠かせない)
こうしてできあがった画像を実際の画家が忠実に模写したことによって、彼らは最終的に「人工知能絵画」という形を完成させたのである。
驚くのはそれだけではない。
展示されている絵画にiPadをかざすと、画面上の絵の一部が動画になるのだ。
例えば写真の「ギザのピラミッド」では太陽の部分がギラギラと動き、ピラミッドを照らしている状況が目視できた。
他、「バビロンの空中庭園」では小川がせせらいでいる様子や、鳥が羽ばたいている様子などが表現されている。
ちなみにこれらすべての絵画は代替不可能なデジタルアート、「NFT作品」となっている。
AI(人工知能)については近年、フランスでも非常に話題になっている。
世界ではAIが芸術の分野に参入してからしばらく経つが、2022年8月にはアメリカのコンテストでAIアートがグランプリを獲り、関係者たちの議論を巻き起こしてしまっていた。
AIアートはもちろんフランスでも賛否両論、どちらの意見もある。
一方では「芸術家の仕事を奪う」と危惧されており、また一方では「AIが画家の仕事を効率化してくれる」と好意的なのだ。
今回はその完成度の高さに感服しつつも危惧してしまった、というのが個人的な意見だったが、可能性という視点で見れば広がりがあり、仏アートシーンも転換期を迎えたと言えるのかもしれない。
人間のクリエイションを脅かすのか、それとも創作の手助けとなるのか。AIと人の共存が美術界で可能なのかどうか、議論はまだまだ続きそうだ。(る)