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パリ最新情報「緑地や歩行者天国も。オリンピック後の新たな日常がはじまるパリ」 Posted on 2024/10/29 Design Stories
2024年のオリンピック・パラリンピック閉幕から2か月近くが経過し、パリの街は大きな転換期を迎えている。
今回の大会は、エッフェル塔前でのビーチバレーやベルサイユ宮殿での馬術といった「街全体での五輪」として、国内外から多くの注目を集めた。
今後のパリは、その遺産を残すべく、会場跡地を「緑化」しながら次世代につなげていくという。
たとえば大会期間中、オリンピックの“ファンゾーン”として賑わったパリ市庁舎前では、去る10月16日より緑化工事が始まっている。
これは、ヒートアイランド対策の一環であるとともに、パリの生物多様性を守るためのもの。広大な市庁舎前には、シダやオークなど約90本の樹木のほか、2万株以上の植物が植えられるという。
「都市の森」と呼ばれるこのスペースは、順調に行けば2025年6月の完成予定だ。
木々の高さは、それぞれ9メートル〜12メートル。以前は日陰のまったくない場所だったので、完成後は人々に新鮮な空気を与えるだけでなく、直射日光を避ける場所として重宝しそうだ。
※「都市の森」完成イメージ図
また、五輪スケートボード会場、パラリンピック開会式の場として注目されたコンコルド広場でも、再開発プロジェクトがすすんでいる。
こちらはパリ市庁舎前よりも、かなり規模が大きい。車の走行は禁止され、将来的には緑地のほか、歩行者天国やサイクリングロードが設置されるという。今後は公募で決まったパリのプロジェクトチームが再開発を担当し、歴史的景観を残しながら広場をリニューアルする。
※現在のコンコルド広場。歩行者のアクセスが五輪前より改善された
大会後のコンコルド広場では、仮設の競技会場・観客席が短期間のうちに見事に解体されていた。使用された資材は、将来のイベントなどで再利用すると聞く。
なお他の会場でも、10月末日にはほぼすべての場所が解体を終えるという。今後はコンコルド広場と同様、次のプロジェクトに引き渡され、スポーツ施設や住居・緑地へと生まれ変わる予定だ。
※元の姿に戻ったセーヌ川は、すっかり秋の風景に
一方、大会が終了した直後には、パリ市民のあいだで「オリンピックロス」とも言える新しい感情が芽生えていた。オリンピック前は批判的な意見の多かったパリジャンが、だんだんとその賑わいを惜しむようになっていたのも興味深い。
先日には日本でも、パリ大会で使用されたユニフォームやタオルなど、備品を販売する「オリンピック蚤の市」が大盛況だったことがニュースになっていた。現地パリでは6時間も7時間も並んだ人がいたというから、五輪がいかに人気だったかが分かる。
旧会場付近ではオリンピックの名残を写真に収めようと、今も多くの市民・観光客が集まっている。
選手村のエアコン問題など、大会中は反省点・改善点も多く見られたが、大会後の環境問題については、パリ市も特に力を入れているところだ。
こうして各会場が廃墟化しないよう、さまざまな取り組みがなされているパリの今。五輪がきっかけでブラッシュアップした街の様子にも、ぜひ注目したい。(ち)