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パリ最新情報「世界一の長寿にフランスの修道女、アンドレさんが選ばれる」 Posted on 2022/05/11 Design Stories
ギネス世界記録は4月25日、フランス女性のリュシル・ランドンさんを存命中の最高齢として認定した。
ランドンさんは南仏トゥーロンに住む118歳の修道女で、別名「シスター・アンドレ」。
4月19日に日本の田中カネさんが119歳で天寿を全うしたことにより、長寿記録が引き継がれた。
フランス女性の平均寿命は世界的にも高く、86歳で世界第6位となっている。(2022年、UNFPA=国連人口基金調べ。1位は男女ともに日本)
人類史上もっとも長生きしたのも、1997年に122歳で亡くなったフランス女性である。
シスター・アンドレは仏取材陣に対し、この記録を塗り替えたい、と語ったという。
彼女は高齢のため視力を失ったが、健康には全く問題がなく、通院もしていない。
現在はトゥーロンの施設で過ごしており、他の入居者とともに穏やかに暮らしている。
2月11日の誕生日には大好きなポートワインとチョコレートケーキを召し上がり、118本のろうそくをすべて吹き消した。
毎日のルーティンは、3食しっかり食べることの他に、祈りを捧げることと、施設の人とおしゃべりをすること。
絶え間なく届く励ましの手紙には、ほぼすべてに返信している。
そんなシスター・アンドレは1904年生まれで、サルバドール・ダリとも同い年だ。
先日再選を果たしたエマニュエル・マクロン氏は彼女にとって18人目の大統領となる。
取材陣に対しては、118年の歴史の中で「美しいもの」と同時に「とても悲しいもの」を見てきた、と打ち明けた。
彼女が見た美しいものとは、第一次大戦の終結、そして二人の兄が無事に生還したこと。激しい戦争から生還するのは、非常に稀であったという。
もう一つは、パリで家政婦として働いた時に見た、美しい首都の光景。
「小さな町にしか住んだことのない私が、輝く町にたどり着いたのです。今から80年前、40歳の時でした」と語る。
逆にとても悲しいのは、戦争が今でも終わらないこと。
「世の中は憎しみが多すぎる。もっと助け合い、愛し合いましょう。」というメッセージを世界に向けて発信している。
シスター・アンドレはこれまでにスペイン風邪を、2021年にはコロナも患った。
しかし、その2回とも驚異の免疫力で乗り切った。
フランスの研究機関は彼女の毛髪やDNAサンプルの提供を求めているが、長寿の秘密は「神のみぞ知る」としてすべて断っている。
パリで働いた後は修道女となり、108歳で目が見えなくなるまで、自分よりもずっと年下の高齢者の世話をした。
「仕事に殺されるという人もいますが、私は仕事に生かしてもらいました」と、生涯を通して努力を惜しまなかったという。
フランス人の平均寿命はどんどん延びている。
理由には諸説あるが、一つはフランスの充実した社会医療制度が挙げられるだろう。
フランスは医療費の負担が少ない。
また、自分の主治医(Médecin Traitant)をもつシステムがあり、同じ医師から定期的に検診を受けることができる。
またフランス人のライフスタイルも大いに影響している。
彼らは、長めのバカンス休暇や、週35時間労働制などから分かるように「余暇」を大切にする国民だ。
ストレスが原因となる心身の病気を事前に防ぐ社会の仕組みも、長寿に繋がっていると言えるだろう。
ただシスター・アンドレは108歳まで現役で働いており、フランスではかなりレアなケースだ。
ベルギーの人類学者ミシェル・プーラン氏は、ヨーロッパで105歳以上の女性は、修道女の割合が非常に高いと指摘している。
祈りと、節制と、人々との交流を大切にするシスター・アンドレ。記録は特に気にせず、これからも穏やかに暮らしてほしいと思う。(オ)