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ロンドン最新情報「規制解除でも感染減少。イギリス人が行ったこととは? 」 Posted on 2021/08/05 Design Stories
イングランドでコロナウイルス関連の規制がほぼ撤廃されてから2週間あまりが経過した。規制撤廃直前の7月16日に一日あたり6万人を超えていた新規感染者数は、このところ2万人台で推移し、減少傾向が続いている。
入院患者の数も今月に入って約5000人で安定している。イングランドに続き、スコットランドでは9日からソーシャルディスタンスの規制が撤廃されることが決まった。政府や科学者は依然警戒を呼びかけているものの、B B Cは「ギャンブルに勝ったか?」と報じ、昨日付「メトロ」紙は「第3波は引きつつある」との見出しを掲げた。
規制の大幅緩和にもかかわらず感染者が安定している背景には、ワクチン接種の進展に加えて、学校が夏休みで大人も出勤する機会が減っていること、屋外で過ごす時間が多いという季節的な要因が指摘される。
また、国立統計局(ONS)による調査では、イギリス全国(北アイルランドを除く)で7月21日〜25日に外でマスクを着用した人の割合は95%に達し、7月初めと変わらない水準だった。政府の緩和撤廃は早すぎると判断し、慎重に行動する人が多かったとみられる。
さらに、追跡アプリの警告を受けて10日間の自主隔離をする人が大量に出ていて、7月21日の週には70万人を超えたことも、感染抑止に効果を挙げているはずだ。
しかし、アプリの警告を受けて交通や食品流通などに支障が出たほか、補償がないまま休職を迫られる人が続出して「ピンデミック」と批判された。
アプリの使用も警告による自主隔離も法的義務ではないため、アプリを削除する人が増えているのを受けて、政府はアプリによる警告の対象を「過去5日間に感染者の2メートル以内で15分間以上過ごした人」から「過去2日間」に変更した。
またイギリス政府は昨日、世界の国をコロナウイルス感染の危険度別に「赤」(帰国時に政府が定めたホテルでの自主隔離が必要)「黄色」(ワクチン接種者なら自主隔離を必要としない)「青」(ワクチン未接種でも自主隔離を必要としない)の3つに分けて行なっている渡航制限について見直しを行った。
「黄色」だが、ベータ株の拡大を懸念材料として特別に帰国時の自主隔離を必要としていたフランスについても、8日以降は他の「黄色」の国と同様の扱いにし、ドイツを「黄色」から「青」へ、インドを「赤」から「黄色」へ変更する。
ただし、渡航前後のウイルス検査は引き続き義務づけられる。グラント・シャップス運輸大臣は「ワクチン接種の成果を生かして海外渡航を安全に再開し、世界の家族や友人との絆を深め、ビジネスを助けるために努力する」と説明している。
イギリス国内で2回のワクチン接種を完了した人の数は昨日の時点で3800万人を超え、成人人口の73%に達した。
しかし29歳以下の若者のワクチン接種率が伸び悩んでいることから、政府はサーカス会場や美術館などでの大規模接種イベントの実施に加えて、無料タクシー送迎やテイクアウトの割引などの特典を設ける計画を進めている。一方、ワクチン接種を大学の寮の入居条件にする計画は中止を発表した。
今月N H S(国家保健サービス)のイングランド部長に就任したアマンダ・プリチャード氏は、今日のBBCの取材に対し、現在イングランドで入院しているコロナウイルス患者の2割が18歳〜34歳であることを明らかにし、ワクチンの重要性を呼びかけている。
現時点で、イギリスでは基本的に18歳以上の成人のみをワクチン接種の対象としているが、昨日になって16歳と17歳も「数週間以内、できるだけ早い時期に」ワクチン接種を開始する方針を、イングランドの副主任医務官であるジョナサン・ヴァン=タム教授が発表した。
ロンドン大学キングスカレッジの研究チームが医学誌「ランセット」オンライン版に3日発表した論文によれば、5歳〜17歳の子どもはコロナウイルスの後遺症の発生率は非常に少なく、4週間後も症状があるケースは4%、8週間後も症状があるケースは2%にとどまる。一方で、感染者が出て学級閉鎖になる事例が相次ぎ子どもの教育と健康への影響が懸念されているほか、社会全体の免疫確保のために全人口の2割を占める子どもたちのワクチン接種は不可欠だとする意見も出ていた。
各方面からワクチン接種の重要性を訴える声がさらに高まっているイギリスで話題になっているのが、アストラゼネカ社製ワクチンの共同開発者であるオックスフォード大学のサラ・ギルバート博士にそっくりなバービー人形が誕生したことだ。
今年6月の女王公式誕生日にデイム(男性のナイトに相当)の称号を受勲したギルバート博士は、英メディアに対して「ワクチン研究者というキャリアを子どもたちにも知ってもらいたい」と話している。