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パリ最新情報「パリ市、2027年より学校給食を100%オーガニックへ」 Posted on 2022/06/09 Design Stories  

5月末のパリ市議会において、市が管轄する公立校の学校給食を100%オーガニックへ移行することが決議された。2027年よりスタートする。

内容はオーガニック食だけではなく、週2回のベジタリアン食も含まれる。さらには食材の50%を首都から250キロメートル以内で生産されたものに限定すること、食事に含まれる砂糖や塩分などの削減も目指す。
パリ市によると、これには2つの理由があるという。1つは早いうちから食意識を高めることで、フランスでしばしば問題となる高コレステロール血症や肥満のリスクを減らす狙いがある。もう1つは、肉食を控えることで主に地球温暖化の原因となる温室ガスの排出を減らすことだ。

パリ最新情報「パリ市、2027年より学校給食を100%オーガニックへ」



ところが市民の間では、当然ながら反対意見も広がっている。
「子供たちにバランスのとれた食事を提供するのは良いが、子供の年齢に合わせて徐々に導入していく必要がある」「アンヌ・イダルゴ市長は有機食品を導入するより先に給食を無料にするべきだった」と、今回の採択を否定する。

しかしパリ市では、2022年1月から使用食材の50%が持続可能な食品(うち20%はオーガニック)であることが義務付けられている。また市が管理する約1300の食堂(学校、施設、老人ホームなど)においては週1回のベジタリアン食がすでに導入されていた。
賛否両論の要となっているベジタリアン食については、パリ市は「市が年間3,000万食の食事を提供していることを知れば、この計画は決して偶発的なものではない。健康のために、野菜を多く食べることを生徒に教えるのは学校の役目であり、逆を言えば、ベジタリアン食の日以外は質の良い肉類や魚を子供たちに提供することができる」と述べている。

全体のおよそ8割を占めるフランスの公立学校では、幼稚園と小学校の給食は市町村、中学と高校の給食は県または地方の管轄である。そして実のところ、給食は義務ではない。
またイスラム圏出身の子供たちも多く、彼らは宗教上の理由で豚肉が食べられないため地方によっては豚肉をメニューから外す所もある。
そのため学校には弁当を持参したり、いったん家に帰って自宅でランチを済ます生徒も存在する。

パリ最新情報「パリ市、2027年より学校給食を100%オーガニックへ」



フランスにおける子供たちのお昼休みは、日本より選択肢が多いというのが実情だ。
化学肥料に頼らないオーガニック食材を使うこと、地産地消、食のサステイナブル化などについては学校給食でも導入すべき良案だと感じた。しかしベジタリアン食を週2回に増やすという今回の採択には、個人的には首を傾げてしまった。
大人の目線だけで決めてしまえば、子どもの成長に甚大な影響をもたらす場合がある。
2027年までにあと5年あるが、今後はさらに学校と保護者間で情報を共有する必要がありそうだ。(内)

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