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パリ最新情報「フランス人はなぜここまで日本に惹かれるのか。そのリアルな声とは」 Posted on 2022/06/07 Design Stories
「日出づる国、ジャポン」フランスのメディアでは、しばしば日本をこう形容することがある。パリの和食ブームは終わりの兆しを見せず、日本をテーマにしたイベントを開けば決まって人がわんさかと集まる。
一体なぜ、日本のどんな部分がフランス人をここまで惹きつけているのだろうか。
フランスの日本びいきは今に始まったことではない。たとえば、19世紀におけるフランスの画家たちに大きな影響を与えたものに浮世絵とジャポニズムがある。
フランスの人々が日本へ憧れる理由の底流に、こうした伝統芸術が関係しているのは確かだ。
ところが熱狂的な日本ファンというのは、これまではアート通という限られた人のみに広がっていた。現在の60代以降の世代がそれにあたる。
今日起きているのは、もっと若い世代が、日本のサブカルチャーにゾッコンになっているという現象だ。
そこには明確な理由があった。
1980年後半に入ると、フランスで日本のテレビアニメが大量に投下された。なかでも『ドラゴンボール』は一世を風靡し、最高視聴率は驚異の65%をマーク。
個人主義で合理性を重んじるフランス文化が、仲間と助け合いながら切磋琢磨するという日本の「協調性文化」に初めて触れた瞬間であった。
さらに彼らは作中で映し出される、ラーメンやおにぎりといった不思議な食べものにも大変な興味を持ったという。
ところが1996年には暴力描写が過激すぎるといった理由で放送が中止になってしまった。しかしそれは逆に彼らの探究心に火をつけ、独自で日本文化について調べるきっかけとなった。
『ドラゴンボール』を見て育ったフランスの子ども達も今や30〜40代。
彼らは今、飲食店の経営者などビジネスリーダーとなってパリのカルチャーシーンを牽引している。自身が影響を受けた日本文化を組み込むのは、彼らにとっては自然な流れだったと言えるだろう。
このように、フランス人が日本に対して憧れを持った理由として、日本の「ソフトパワー」がアジアのどの国よりも早くフランスに流入したことが挙げられる。
もしトップバッターが中国であれば中国だったかもしれないし、韓国であれば韓国だったかもしれない。そう語るフランス人もいるのだが、それだけではない日本の魅力について、彼らのリアルな声を聞いてみた。
・40代前半男性、日本語学習者、日本居住歴一年
「アニメ文化も関わっているとは思いますが、フランス人の日本に対する興味はもっと深いところにあると思います。
日本人には素晴らしい詩的感覚や細部へのこだわりがあり、全てにおいて完璧を目指します。たとえばフランス人はプレゼントの包装を嬉しくてすぐ破りますが、日本人は相手の許可を得てから大切そうに開く。こうした相手への敬意が影響されて、フランス人も日本文化に敬意を払うようになったと思います。ただ、完璧を求めるあまり疲れてしまわないか心配になりました」
・30代前半男性、日本語学習者、日本へは4回渡航経験あり
「日本に行った時、日本人は通行人でさえとても親切でした。私にとって日本は遠く、ミステリアスなイメージがありましたが、みな外国に興味を持っていて、日本語を話したら褒めてくれました。フランス人はフランス語を話してもあまり褒めることをしません。私は神道に興味があって、季節や自然現象に敏感な日本人がとても好きです。日本語に関していえば、“ボロボロでクタクタだ”と単語を二回繰り返すだけで感情を表現できるのが面白いですね」
・60代前半女性、日本への渡航歴なし
「私は息子が日本好きなので息子に影響されました。日本人は、特に食への探究心が素晴らしいですね。パティシエコンクールでも賞を取るのはフランス人か日本人です。フランスと日本は、何世紀もそれぞれ別の方向で美に対する追及をしてきたという共通点があります。少し働き過ぎだという印象はありますが、そうすることで彼らの文化や伝統を守っているのでしょう。縦書きの文字は特に美しいと思います」
フランス人はなぜここまで日本に惹かれるのか。広義で言えば、日本のソフトパワーがフランスを座巻したことに理由がある。しかしそれ以上に、島国という地形からくる神秘性、孤高性がフランス人を大いに魅了していることが、今回の調べで分かった。(セ)