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パリ最新情報「日本の長寿番組『はじめてのおつかい』、フランスでもブレイクの兆し」 Posted on 2022/05/07 Design Stories
1991年から30年にわたって放送されている日本の長寿番組「はじめてのおつかい」。
現在Netflixで全世界に配信されており、釘付けになる人がフランスでも続出しているという。Netflixでの配信は一話が7分〜20分にまとめられており、子どもたちは壁にぶつかりながらも健気にミッションをこなしていく。
フランスのメディアは「はじめてのおつかい」について、「斬新な企画というだけでなく、日本人のリアルな生活ぶりも知ることができる、興味深いリアリティショーだ」と伝えている。
まずフランス人が驚いたのは、子どもが一人で出歩ける安全な環境が整備されていること。
というのもフランスでは、子どもが小学校を卒業するまでは親が送り迎えをしなければならない決まりがあるためだ。
送り迎えは学校だけでなく、お稽古事の行き来や外出などにも必要。
子どもが誕生日会などにお呼ばれをした時も、必ず送りに行って迎えに行く、あるいは、招待してくれた家のお父さんかお母さんが家まで迎えに来てくれたり、送ってくれたりする。
両親が共働きで時間が取れない場合はベビーシッターさんが代わりに迎えに行く。
このように、小さな子どもが一人で家にいることも、一人で外出することもフランスでは許されない。もし子どもが一人で通学しようものなら、親は学校に呼び出されるか通報されてしまうだろう。
裏を返せば、それほどフランスが危ないということを物語っている。
スタッフが見守っているとはいえ、「はじめてのおつかい」が成立するのは、日本の治安の良さが背景にある。
もう一つフランス人が着目しているのが、日仏の教育の違いについて。
登場する子どもたちの無邪気な表情に「メロメロになる」とする一方、怖がっている子を無理やり家から連れ出すことに不安を感じたという人も。
2歳~5歳くらいの小さな子どもに、おつかいを頼むことはフランスではまずない。
「はじめてのおつかい」が企画である、というのはフランス視聴者も分かってはいるものの、「出演者の親は本当に限界に挑戦していると思う」との意見があった。
ただ、失敗しながらも子どもが最終的にミッションを成功させ、それを親子で喜んでいる姿には共感できたという。
成長するにつれ、フランスの子どもは急速に自立を促される。しかし、日本の子どもは比較的早いうちから周りの協力を得て、ゆるやかに自立する。
小さな子におつかいを頼むのはまだ早いのでは、といった意見もあるが、「傷つかない限りは成長しない」と一定の理解を示す視聴者もいた。
彼らは「はじめてのおつかい」を通して、自分が受けてきた教育やこれから受けたい教育について考えさせられた、としている。
フランス人の意見として印象的だったのは、そうした日仏の違いについて非常にフラットな見方をしているということだ。どちらが優れていると比較することもなく、フランスにはフランスのやり方が、日本には日本のやり方がある、とした上で、「感情移入ができる番組。30年続いているのも納得がいく」と概ね好意的に受け止めている。
また、注目される理由として、日本の暮らしぶりに密着しているところも挙げられる。
例えば地方の子どもが、お父さんが釣った魚を近所の魚屋さんで刺身にしてもらうというおつかいがあった。
最終的に家族全員でその刺身をいただく風景が放送されるのだが、「商店との良い付き合いが日本には残っている」「日本人はこんなに小さいうちから刺身を食べているのか」と、他では知ることのできない濃い内容に驚いていた。
親子の奮闘とともに、流れる地方の美しい風景や、日本人の日常。
「ちょっとヒヤッとする場面もあるが、本当に面白い。愛らしい子どもの顔は見るに値する」と、フランスでも大きな反響を呼んでいる。(せ)