欧州最新情報

パリ最新情報「フランス、2023年よりレシートの発行を廃止へ」 Posted on 2022/04/21 Design Stories  

フランスでは2023年1月1日より、買い物をした時に発行される紙レシートが廃止となる。
これはゴミの量を減らすことを目的とした、廃棄物対策法(loi anti-gaspillage pour une économie circulaire)によるもの。
仏国内では年間120億枚のレシートが印刷されており、スーパーマーケットだけでも約10,600ロールが消費されている。
伐採される木は250万本に相当し、9.5億リットルの廃棄水を生み出しているという。
ところがそのほとんどが直ぐにゴミ箱行きになっているという現実を憂慮し、仏政府が決定を下した。

具体的には、スーパーマーケットをはじめとした小売店全般、カフェやレストランで伝票代わりに発行されるレシート、カード払い時に別途発行される決済レシートである。
来年からは、顧客がその場で依頼しない限りこれらが一切発行されなくなる。
今後はオンラインでのみ買い物履歴を閲覧することが可能なため、各店舗のメンバーとなることも必要となる。

ただこのレシート廃止については、環境には良いとする一方で、仏消費者団体から反発の声も上がっている。
保証書の役割を果たし、また表示価格の誤りを確認するためにも使用できるレシートの発行をオンライン化するのは詐欺などの犯罪に繋がるのではないか、と安全面が懸念されているのだ。

パリ最新情報「フランス、2023年よりレシートの発行を廃止へ」

地球カレッジ



また世代間でも賛否が分かれている。
年齢層が高い世代ではレシートが重要な「家計管理のツール」となっており、急速なオンライン化に対応できない人もいる。
レシートは消費者にとって必要な購入証明であり、レジ打ちミスも指摘しやすいと、団体に肯定的だ。

一方、現在の30歳以下の世代は環境保護に非常に熱心である。
また彼らはオンラインの時代に生きる世代であり、紙媒体から電子媒体へ移行することには抵抗がない。
キャッシュレスも進んでおり、オンラインで決済ができれば証拠は残るので紙レシートは不要だと主張している。

パリ最新情報「フランス、2023年よりレシートの発行を廃止へ」



と、フランス国内でも賛否両論なのだが、重要なのはレシートの感熱紙がリサイクルできないということだ。
感熱紙には熱で発色する薬品が使用されており、熱が加わると黒くなる。
そのためリサイクルは不可能。レシートのためだけに伐採される木の数の多さを考えると、すぐにゴミ箱行きとなる無駄紙はやはり減らさなくてはならない。

なお、仏大手スーパーの「スーパーU」は既にレシートの発行を計1600店舗で廃止しており、この一年で節約できた紙は距離にして約4万kmにも上ったという。
レシートの改ざん問題など議論すべきところはまだあるが、欲しい人にのみ印刷するという方法が今のところ最善策なのではないだろうか。(内)

自分流×帝京大学