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パリ最新情報「ルーブル美術館で『モナリザ』襲撃事件が起きる」 Posted on 2022/06/01 Design Stories
5月29日、ルーブル美術館に緊張が走った。
人類の宝とも言うべき『モナリザ』が何者かによって襲撃されたのである。
30万点以上の所蔵品を誇るルーブル美術館の中でも、レオナルド・ダヴィンチ作の『モナリザ』は名画中の名画だ。一日平均では約3万もの人が、彼女の前に集まるという。
事件が起こったのは日曜日の正午過ぎ。観光客がパリに戻ってきたこともあって、ルーブル美術館はコロナ前のような賑わいを見せていた。
列の先頭にいた男は突然、『モナリザ』の保護ガラスを割ろうとした。そして奇妙なことに、男は老婦人に変装し車椅子に乗っていたのである。
その後、車椅子から立ち上がった男は今度バッグに忍ばせていたケーキを保護ガラスに向かって投げつけ、フランス語でこう叫んだ。
「地球を壊そうとする人たちがいる。地球のことを考えよう。だからやったんだ!」
男はさらに床に向かって真っ赤なバラをまき散らした。
男はすぐに警備員にタックルされ、その場で取り押さえられた。
なお保護ガラスにも『モナリザ』にも損傷はなく、その後直ちに清掃作業が行われたという。現場に居合わせた人は、「白い服を着て、かつらをかぶって話す姿が不気味だった」と語った。
一部始終を収めたTwitter映像はすぐに拡散し、これまでに数百万回以上が再生されている。
男は文化財破損未遂で現行犯逮捕された。36歳で、地球保護活動家を名乗っているという。パリ警察本部はすでに男を精神科病棟に移している。
ルーブル美術館サイドはこの件について具体的なコメントを差し控えているが、昨日30日には提訴する意向を発表した。
ダヴィンチ作の『モナリザ』は、これまでに何度も狙われてきた。
2008年には観光客によってティーカップが投げつけられるという事件が起きている。現在のような保護ガラスが設置されるようになった経緯には1956年の投石事件が関係しており、それによって絵画の左角が損傷してしまった。
今では『モナリザ』の両側に2人ずつ、彼女のためだけに4人ものボディーガードがいる。ルーブル美術館でこのような保護を受けているのは、『モナリザ』だけだという。
また、その壊れやすさ(絵の裏側にひびが入っていることが知られている)から、美術館内でさえ動かすことが禁じられている。
しかし、なぜこの絵画だけが標的になるのだろうか。過去に襲撃を試みた人物はいずれも精神に問題があったというが、彼らはただ注目を集めたいだけなのか、それとも他に理由があるのか、謎は深まるばかりだ。
いずれにしても『モナリザ』が何かしらの吸引力を持っていることは確かだ。
パリはルーブル美術館のほかにも多くの観光名所を抱えている。
今回は幸いなことに大事には至らなかったが、パリ五輪を2年後に控えていることもあり、さらなるセキュリティ強化が課題となりそうだ。(大)