PANORAMA STORIES
夏のハイライトを彩る、アムステルダムのゲイ・プライド Posted on 2017/08/19 まきの ななこ ライフスタイルキュレーター アムステルダム
オランダの人々が心待ちにしている夏。
そのハイライトを飾るにふさわしいイベント、ゲイ・プライドが、今年も8月の第1週目に開催されました。
期間中は街中でLGBTs(※)の人たちの平等と自由と権利を謳歌する催し物が目白押しなのですが、中でも一番盛り上がるのが週末に開催される運河でのボートパレードです。
※LGBTs・・・「LESBIAN (レズビアン)」「GAY (ゲイ)」「BISEXUAL (バイセクシュアル)」「TRANSGENDER (トランスジェンダー)」の略と、「s (その4つに当てはまらない人々)」を表す。(編集部注釈)
毎年80艇に及ぶカラフルに彩られたボートが、大音量の音楽とこぼれ落ちそうになりながら踊りまくる人々を乗せて、アムステルダム市内の運河を巡る光景は圧巻! のひと言に尽きます。
今ではその認知度が広く高まった ”LGBTs” という言葉ですが、オランダこそ、世界で一番最初にいわゆる同性婚が法律的に認められた国なのです。
と言っても、それは2001年の話。まだまだ歴史は浅いですね。
世界中で性、人種、宗教などあらゆる垣根を超えた自由が訴えられるなか、悲しいことですがそれとは相反する動きや暴力も発生しています。
陸つづきであり様々な人々が長い長い歴史を抱えて生きる欧州では、そんな動きに敏感にならざるを得ない時もあるでしょう。
昨今の社会的背景もあり、今年のゲイ・プライドはテロの可能性も否めないとして、厳重な警備態勢のもとに開催されました。
でも、実際に参加してみるとそんな重々しい雰囲気を全く感じることなく、誰もがピンクやレインボーカラーの洋服や旗を翻し、ビールを片手に自由と平和を謳歌していました。
私はアムステルダムに住んで約3年ですが、その前にもいくつかの大都市で生活してきました。
でも、アムステルダムに住んだ瞬間、 ”うむ、この街は何かが違うぞ!” という匂いがプンプンしていたのでした。
東洋人でもなく、女性でもなく、どこどこの会社の人でもなく、誰々の奥さんでもない。どんな肩書きも無い、ただそこに今いる”私”。
それだけで生きていけると感じたのが、この街アムステルダムでした。
”LGBTs” の人に優しい街は、どんな人にも優しい開かれた街なのです。
ゲイ・プライドの期間に限らず、いつもの街角、カフェやレストラン、スーパーに薬局、そしてもちろんオフィス。至る所でLGBTsだけでなく、体が不自由な方や高齢の方など、誰しもがそれぞれのやり方で過ごす権利がとても尊重されている、それがアムステルダムという街の印象です。
そしてもうひとつ。
イベントやパレードの際に毎回目をみはるのが、その準備と後片付けの素晴らしさ!
日本の花火大会などと同じく、こちらでも大勢の人が楽しんだ宴のあとは、かなり大量なゴミにみまわれます。ですが、なんとこの街、その2〜3時間後には清掃車と清掃員の方が巡回しほぼ全てのゴミを回収、翌日の朝には昨日のお祭り騒ぎが嘘のようにピカピカになっているのです。
実は私、パレードが開催される運河沿いに住んでいるので、本当に毎回毎回、感謝の念に堪えません(笑)。
どんな困難な状況の中でも、いつも自由なアムステルダム魂を忘れない現アムステルダム市長ですが、ご自身が癌に侵されていることを公表しています。
市長の人気は相当なもので、毎日たくさんのお見舞いの手紙が送られ、先日は市長の等身大ストリートアートなるものも登場したとニュースになっていました。
上に立つ人とそれをサポートする人。そのどちらもバランス良く機能した時、街は本当に豊かに発展するのだなぁと、この街には機会あるごとに行政の大切さと市民の責任の重さを思い起こさせる英知なるパワーがあります。
7色の紙吹雪が舞う青空に向かい、平和であることに心から感謝し、そしていつの日かこのようなパレードが行われなくても、あらゆる人たちの自由で平等な権利が守られる時代がきますように、と心の中でお祈りする、著者、在アムステルダム3回目の夏であります。
Posted by まきの ななこ
まきの ななこ
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ライフスタイルキュレーター。シカゴ、東京、モスクワ、ロンドン、、、一期一会に生かされて。新しいホテルやブランドなどの立ち上げに携わりながら様々な都市を巡り、2014年よりアムステルダム在住。オランダ語見習い中。放浪癖あり。