JINSEI STORIES
人生は後始末「かわいい子には旅をさせろ」 Posted on 2017/07/21 辻 仁成 作家 パリ
フランスの夏休みはとっても長いのです。
ちなみに、うちの子の学校は、6月15日から9月4日まで。これ、長すぎません?
そのほかに、2週間規模の休みが年4回もあります。いったい、いつ勉強をしているというのでしょう?
さらに、日本のような受験のための塾というものがありません。
ただ、宿題の量が半端ないので、寝るのはいつも夜中。
自主性を重んじるこの教育方法は悪くないな、と小生は思います。
さて、そんなフランスの子どもたちにとって夏休みはパラダイス! 9月から新学期になるので、何せ宿題がないのですから…。
しかし、問題は子どもが家にい過ぎるということでしょう。
学校に行ってもらった方が親は何かと助かるのですが…。
この夏、息子ははじめての短期留学を経験しました。留学というよりも、体験入学という感じでしょうか。
授業は英語。宿舎に入り、他の生徒さんと相部屋です。
親としては心配ですが、かわいい子には旅をさせろ、と言います。
しかし、そこはさすがに子どもですね、順応が早い。
最初は「ついていけないよ」と泣き言を言っておりましたが、1週間もしないうちに環境になれ、面白い、と言い出しました。新しい友だちもたくさんできたとのことです。
週末には一人でバスや電車を乗り継ぎ、プティ旅行を楽しんでいる、と。
やれやれ、子どもの成長の早さに驚かされます。
実は、昨日、長いメールをもらいました。苦手な日本語で書かれた長文のメールです。
「ぼくはできれば夏休みの間、旅に出たいのだけど、いいかな?」
知り合いの家などを転々として経験を積みたい、というのです。
今日は朝から、航空券の手配や、受け入れ先のご家族とのやりとりに追われました。
心配ですけど、もう13歳ですからね、親にも送り出す勇気が必要です。
この短期留学で彼が掴んだものは経験や語学力だけじゃなく、自立心だったのかもしれません。
確かに彼の巣立ちは自分と比べちょっと早いような気がします。
「ぼくの財産は友だちなんだよ。それさえあれば寂しいことはない」
手紙の最後はそう締めくくられてありました。
今日の後始末。
「自立していく息子が、いつでも帰りたいと思える存在でありたい」