JINSEI STORIES
人生は後始末「私にも敵はいない」 Posted on 2017/07/16 辻 仁成 作家 パリ
「どうしても許せない」というのは、人間ですからね、あります。
「だって、どうしても許せないんだよ、あいつだけは」
この人の気持ちなんとなくわかります。別に許す必要ないんじゃないか、と思いますよ。
本当に頭に来たなら、一生許さなくていいんです。許さなきゃならないと思うのは日本人的思考です。
フランス人は一度許さないと思ったら、そこで終わります。
終わるわけですから、引きずらない。これは素晴らしい発想だと思いませんか?
一度こじれると仲直りというのは皆無なのです。
縁が切れることになり、復縁はほぼありません。これがフランス流です。
日本だと、こじれにこじれて、ねちねち考える(笑)。いかんですな。
フランス人はもっと残酷ですよ。バサッと切ります。恨みもしないけど、もう相手の存在を見ない。
(笑)。
彼らは仲直りを模索したりもしません。その分、ストレスを抱えることもないわけです。
どっちがいいですか? ねちねち考え続けるか、一生見ないか。
うーん。
二度と交わらないことなんかできるの? と思うのですが、できちゃうんです、フランス人には…。
彼らはストレスを抱えないことに関してプロフェッショナルです。
日本人的には難しいことですが、許せないものを無理して許す必要はないでしょう。
フランス人は「セラヴィ。(それが人生だ)」と呟きすべてを解決します。
これはフランスで小生が学んだことです。
しかし、小生は日本人ですから、許せなくても、仲直りは模索します。
ここは日本の「和」の精神を尊重したいですね。
相手にも言い分がある。こちらにも言い分があります。
仲直りはできる。あなた次第です。相手次第ですね。許す許さないではなく、認めるか認めないか。
小生はこのことを日本で学んできました。
先日、ノーベル平和賞を受賞した民主派作家で人権活動家の劉暁波 [リウシアオポー] 氏(61)が亡くなられました。劉氏の「私には敵はいない」という言葉が心に焼き付いています。
この一行を目にした時、涙がこぼれました。
小生はこのことを劉氏から学んだのです。
胃に穴をあけるような毎日を生きるより、青空を見上げて、先へ進んでいくのがよくないですか?
一生はあなたのものです。
今日の後始末。
「終わりよければすべてよし」