JINSEI STORIES
人生は後始末「キツツキの穴レストラン」 Posted on 2017/07/11 辻 仁成 作家 パリ
7月1日と2日の2日間限定でキツツキの穴レストランを風光明媚な山岳地帯にオープンさせていただきました。
Design Storiesの応募読者さん一組を含む、総勢20名のお客様をお迎えし、フルコース料理を振る舞ったのです。
実は去年、積水ハウスさんに依頼され、女性誌25ansの企画で、16人のお客様を前にシェフをやらせていただきました。
食材をパリから持ち込み、料理仲間たちの力を借り、積水ハウスの豪華なモデルハウスのキッチンで、フルコース作りました。その時の感動と経験がここに繋がっています。いやはや、趣味もここまでくるとなかなか本格的です。
今回は料理代をいただきましたが、地方の一軒家だったこともあり、交通費、材料費、人件費がかかって、
利益にはなりませんでした(笑)。
飲食業はたいへんな仕事だ、と実感した次第です。
けれども、息子だけじゃなく、いろいろな人に食べていただくことができました。
この経験はお金に換えることのできない素晴らしい人生経験でしたよ。
ほとんどの方がはじめてお会いした方々でしたが、みなさん満足していただけたようです。
自分たちが企画するので、地元でやってほしい、と依頼が舞い込みました。
出張キツツキの穴レストラン。
いいですね、いつか、やりたいです。
昔から食べることよりも、料理をして、だれかに振る舞うことが好きでした。
子供のころに、料理人になりたい、と思ったこともありました。
「99才まで生きたあかんぼう」など幾つかの小説にその思いが溢れています。
料理の中にはいろいろなものが含まれています。
人間の歴史、風土、食文化、サービス、作法、味わい、香り、幸福。
品のいい、風格のある、美味しいレストランに巡り合うことは生きる喜びに繋がります。
料理を考案し、作り、サーブし、喜んでもらう、まさにエンターテインメントですね。
もちろん、料理人になりたいだなんて、思ってるわけじゃないんです。
楽しい時間を限られた方々と共有する喜びをそこに見つけることができました。
「キツツキの穴レストラン」またいつか、どこかで、開店したいですね。
ご縁があれば。
今日の後始末。
「みんなが食べた後のお皿を洗う。そこまでが料理なり」