PANORAMA STORIES
欲望の街ハンブルク、レーパーバーンの夜 Posted on 2017/06/13 エロチカ・バンブー バーレスクダンサー ベルリン
ドイツはどこへ行っても先ず美しい街だとつくづく思う。
シンデレラのお城の舞台になった美しいノイシュヴァンシュタイン城 や、おとぎ話の世界に入り込んでしまったようなメルヒェン街道。
そんな麗しき国、ドイツ…。
そのドイツに、毎夜大音量の音楽のなか赤窓に女がならび、そこに群がる酔っ払いたちが馬鹿騒ぎをしているエリアがある。
ギラついた街、レーパーバーン。
その昔、リーゼントに革ジャンのビートルズがドイツで初めて演奏したのもこの街だった。
労働者階級、パンクス、反権力の象徴、ザンクトパウリ地区にある。
22時、レーパーバーン駅からクラブへ。
いかがわしいセックスショップ、お土産屋、キャバレー、ドラァグクイーンが引率するツアー客(いたってフツーの人たち)の一行、バチェラーパーティー(※)で変装した男性グループ、濃いメークにお尻が半分見えるショートパンツ、シリコン製の巨乳を小さなタンクトップに詰め込んだ無表情の娼婦たち…。
その間をぬって店へ向かう。
すでにそれぞれのバーからは大音量の音楽の垂れ流しが通りを活気付けている。それが全く統一性がないのでアバンギャルドな芸術作品のようにも聞こえる。
ああ、もう本当にうるさい(笑)!
今夜のショー会場は女人禁制の壁の前にあるクラブ、”ホーム・オブ・バーレスク”。壁の向こうは赤窓、男性しか入れないセックス特区なのである。
アムステルダムの赤窓は女性も通れるけれど、ここは女子供立ち入り禁止。
ハロー!
いつものようにドアを開けると、DJのヤコブが迎え入れてくれた。
「ハロー、スィーティ! よく来たね、カバンを運んであげるよ」
店には小さなステージと、奥にはダンスフロアーがある。壁にはバーレスクダンサーの写真が飾られている。
口ひげと笑顔がチャーミングなDJのヤコブはもうすぐ70歳。ロックな格好がよく似合う。私は彼を「アンクルJ」と呼んでいる。
クラブの地下にある湿気くさい楽屋。
性欲の渦巻く街のまさしくど真ん中にあるクラブでも、楽屋はなぜか神聖な場所に感じられる。一歩入ったら背筋が伸びるのは職業病だわね。
毎週末、23時から3人のバーレスクダンサーが順番にショーをする。
世界中からダンサーがやって来ては去って行く。今回はカナダ、ベルギー、そして日本。
楽屋ではすでにベルギーのカルロッタがメークをしていた。器用にカールを作り20年代風のクラシックなヘアスタイルを作っている。
挨拶をすませると私もメークに取り掛かった。そこへ、「ヘイガールズ!」大声でカナダのダンサー、ローラがやって来た。ベリーショートをブロンドに染め、スタイルのいい大柄の美女は、まくしたてるように冗談まじりに話す。
「ガールズ! アタシの部屋に来て、寂しいの。アタシにハグしてちょーだいな! アタシの部屋は10号室よ」
そのあと彼女はテキーラショットを15杯ふっかけ、お客のコペンハーゲンから来たロックバンドの一人に狙いを定めた。いくらロックミュージシャンだってタジタジ。彼女は肉食系じゃなくもう手の付けられない野獣系(笑)!
獲物は逃さない。オスを食べちゃうカマキリみたい!
夜中を過ぎると楽屋にまで地上の酔っ払いの喧騒が聞こえてくる。楽屋だって負けずに賑やかだ。
さて、私もそろそろ衣装に着替えるか。
レーパーバーンの夜はまだまだこれから。
(※)バチェラーパーティー 結婚直前に馬鹿騒ぎする一行。女性のブループもある。大概同じような馬鹿げた変装をして楽しむ。
Posted by エロチカ・バンブー
エロチカ・バンブー
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バーレスクダンサー。日本の各都市のクラブやキャバレーでショー活動した後、2003年にラスベガスにある世界で唯一のバーレスクミュージアム、Burlesque Hall of Fameで開かれるバーレスクの祭典で最優秀賞を獲得。それを機にLAに拠点を移す。2011年よりベルリンへ移りヨーロッパ、北欧で活動中。ドイツのキャバレー音楽ショー”Let’s Burlesque”のメンバーとしてドイツ各地をツアー中。