PANORAMA STORIES
フランス音楽はただ今輸出が絶好調! Posted on 2017/06/12 河井 留美 音楽プロデューサー パリ
大統領選が終わり、マクロン新内閣が発足した。内閣の約半数を女性が占め、各党派から幅広く人材が登用された。
このところカフェでもソワレでも、この話題が上がらないことはないように思う。
私のまわりのフランス人達は口を揃えて「決して簡単な状況ではないけれど、何かが変わるかもという期待はあるよ」と言う。シニカルなフランス人にしては非常に珍しいことではないか!
文化大臣には上質な美術書や文学作品やCDを発表し続けている出版社「アクト・スッド」の創立者の娘で現社長ベルギーとフランスの二重国籍を持つFrançoise Nyssen(フランソワーズ・ニッセン)女子が就任。私個人は文化大国フランスらしい人選だと思う。
これからフランス音楽はどうなって行くのか? 久し振りにフランス音楽振興会の代表に会って話しを聞くことにした。
今フランス音楽はこの50年来経験がない程輸出されており、ワールドワイドで活躍するアーティストが急激に増えているとのこと。定番となったフレンチ・エレクトロのDaft Punk(ダフト パンク)やAIR(エール)、David Guetta(デヴィット ゲッタ)は言うに及ばず、Phoenix(フェニックス)にJustice(ジャスティス)、英米でも人気が高く2016年「BBC’s 100 Women」に選出されUKチャートでもトップ10入りをはたしたChristine and the Queens(クリスティーヌ アンド ザ クイーンズ)、 アジアツアーも大盛況だったサイケデリック・ポップバンド、La Femme(ラ・ファム),「This Girl」が世界で爆発的にヒットした若干20歳の南仏出身のKungs(コングス)、25歳のワールドミュージックよりのシンガーソングライターJAIN(ジェイン)、17歳のサウンドクリエイターPetit Biscuit(プティ ビスキュイ)などかなりの数のアーティストが、今まで一番難しいとされた北米や英国で絶大な支持を得ているのだ。
現実彼らのSNSをチェックしてみると、実に皆連日世界を飛び回っているのがわかる。
このような状況になったのか理由をトノン代表に質問してみると英米をはじめとする各国のアーティストとコラボすることで、文化の違いは基より言葉や表現上のタブーに注意してローカライズを行なったこと。
You Tube やFacebookなどのSNSを最大限に利用し迅速な情報の拡散を行なったことが大きいのではないかと言う答えが返って来た。元々異文化に寛容な国民ではあったが、それはあくまでもフランスにやって来た文化を受け入れると言う意味だったように思う。
ところが今のフランス人は(アクセントはさておき)以前に比べて何の気負いもなく英語を話すし、交換留学などで海外に行く若者は年々増えている。グローバルな視点を持つフランス人が増えたと言えるのだろう。
アーティスト自ら多原語で情報を発信し、興味を持ち合ったアーティストとコラボして行く。自然な流れでできた楽曲は自然に聴衆に支持されるのかも知れない。
一方でヴィクトワール・ドゥ・ラ・ミュージックのグランプリを獲得した生粋のシャンソン歌手Vianney (ヴィアネ)や、日本でも人気の高いZAZ(ザーズ)は、「フランス語で歌うこと」を武器にワールドツアーを行なっている。こちらのファンはマイノリティーではあるが各国に存在する「フランス&フランス語好き」と言うことらしい。
快進撃を続けるフランス発の音楽。新しい大統領もこの事実をご存知なのだろうか?
Posted by 河井 留美
河井 留美
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音楽プロデューサー。1990年代よりフランス音楽に携わり、クレモンティーヌ、カーラ・ブルーニ、シルヴィ・ヴァルタンなどを日本に紹介する。最近では日本のアーティストのヨーロッパ公演のコーディネートも多数。