JINSEI STORIES
リサイクル日記「せせらぎに耳を澄まし、言葉には心をこめて」 Posted on 2022/07/01 辻 仁成 作家 パリ
最近、よく思うことがあります。
実際、言葉に救われてきたな、と。
苦しい時は、苦しい自分に手紙を書くんです。
拝啓、辻仁成殿、というかんじで
それをメールで送ってから寝ます
翌朝、パソコンを開くと、自分からのメールが届いているという寸法です。
もうそんなにがんばらなくてもいいよ
今日はのんびりやりなさい
昨日の自分が今日の自分にあてた言葉たち
やってみてくださいね
さて、今日は言葉に救われるというお話しです
人生はせせらぎのようなもの
小川の流れの中に、そっと足をいれるような気持ちで、読んでみてください
言葉にしなければ通じないことって多いです。けれども過剰な言葉が人を殺すこともあります。
言葉は難しい。
けれど、言葉がこの世界を作っているのも事実。
人間関係は言葉一つでどうにでもなります。
不用意に使った言葉が命取りになったり、選び抜いた言葉のおかげで命拾いをすることも。
思ったことをきちんと言葉にする練習が大事です。
細かいニュアンスによって同じ言葉でも意味が変わります。
「言葉尻を捕らえる」といいますね。
他人のささいな言い損ないにつけ込み、攻撃や批判をすることです。
つまり言葉尻とは失言のこと。
それはちょっとした言い間違いが原因です。言葉というサーベルをうまく操れないからです。
この言葉という生き物は扱い方を間違えると諸刃の剣(もろはのつるぎ)となります。
言葉を選んで慎重に使うことが大事ですね。
政治家が失脚する原因の一つに失言があります。
なんてつまらないことで人生を失うのか、と思います。
うぬぼれや思い上がりがそういう軽々しい言葉を生み出すのです。
言葉尻こそが大事です。
そのためには真心を込めて言葉を紡ぐ必要があります。言葉には言霊が宿っています。
正確には心のこもった言葉に言霊は宿るわけです。
言霊の宿った言葉をたくさん使うことが運気を上げることに繋がるだけでなく、
発した人の人生を豊かに広げていきます。
いい言葉は発した人を正のスパイラルに導く。
言葉は自分を殺す道具にもなりますが、自分をよく生かすための天使の翼となります。
毎日、人の悪口を言っている人がいます。そういう人の周辺に幸福はあるでしょうか?
同じような連中しか集まってきませんね。よく見てみてください。
「類は友を呼ぶ」という言葉があります。
心がけていい言葉を使ってみると変わります。そういう人には同じような志の人が集うものです。
陰湿な沼地で人は生きてはいけませんよね。青空を見上げて清澄な気分で生きたい。
ならばまず澄み渡った言葉を選ぶのが最善の方法です。
その言葉が自分を明日救うことになるのですから。
心のこもらない『ありがとう』に言霊は宿りません
ありがとう、は、心の底から言いたいですね
いつも、読んでくださって、本当に、ありがとう。