PANORAMA STORIES
同僚たちがしぶしぶ答えた大統領選の行方 Posted on 2017/05/04 スザンヌ 内堀 学生 パリ
日本でもフランスの大統領選のニュースが話題になっていると聞きました。辻編集長から、私が通う大学の研究施設で働く同僚、教授、或いは学生たちがどのように思っているか調べてしてほしい、と連絡があり、リサーチしてみました。話を聞いたのは20代後半、30代前半の男女十数名です。
みんなもれなく第1回目の投票には行ったのですが、私の周りでは誰一人100%の賛同で候補者に投票した人はおらず、口を揃えて出てくる言葉は「à défaut de mieux(一番、がいないから)」「meilleur que les autres(他よりはまし)」というものでした。
その候補者を選んだ理由も、「政策が他よりは共感できる部分があった」「他の候補者よりは誠実な人柄だと感じた」という、「あくまでも他と比較したらましだっただけ」感が満載な、消極的な意見ばかり。
エマニュエル・マクロンとマリーヌ・ルペンの2名で第2回目の投票を迎えるわけですが、次の投票へ行くかどうかは意見が分かれています。
ただ、行く人にも行かない人にも共通しているのは、結局どちらかに賛同しているわけではない、ということ。
行かない人は、どちらも選びたくないから行かない。行く人は、少なくとも「まし」な方に決まって欲しいから行く、という具合です。
「資本主義の塊のようなマクロンと憎しみに溢れた雰囲気が拭えないルペン、どちらに魅力があるか決めようとする行為自体が無駄だ」と言い切った同僚もいました。
「新大統領着任後、フランスはより良い国になるか」という話題では、Ouiと言った人はいませんでした。
マクロンはオランドと政治思想が一緒だから、悪くならないにしても良くもならない。
ルペンになれば国は変わるかもしれないが良い方へ向かうとは思えない。
明言を避ける人もいましたが、雰囲気としてはそんな感じでした。
今回は私が話題をふったのでこういった話になりましたが、そうじゃなければ大統領選の話は少なくとも私の通う大学や研究施設ではほとんど話題に上りません。
みんなの意見を聞いていると、興味がないのではなく、興味が持てないのではないかという印象。フランスの未来を託したくなるような、期待できる候補者がいないので、話題に出すまでもない、という空気でした。
「白紙投票は、選ぶべき候補者がいないという立派な主張なのだから、票としてカウントされるべきである」という訴えが起こったことが話題になりましたが、正にそれを象徴しているかのようなみんなの意見だと思いました。
この訴えを起こした団体が作成したポスターに書かれている「ペストかコレラの選択はもうしたくない」という皮肉に溢れたキャッチコピーがとっても今のフランス大統領選の空気感を物語っているように思います。
若い世代にもアンケートを行いました。
1、あなたは誰が大統領に選ばれると思いますか?
2、もし、その人が選ばれたらフランスの政治は改良されると思いますか? それとも悪化すると思いますか?
3、どうしてそう思うのですか?
エミリ (32歳、医師)
1、マクロンが次の大統領になるでしょう。
2、よくも悪くもならないと思います。
3、今まで通りのパッとしない政治が続き、フランスの経済状況も、フランス人の生活水準も停滞する一方でしょうね。
アラン (28歳、銀行員)
1、次の大統領はマクロンでしょう。
2、マクロンは賢く勇敢で、良い意味で大胆な政治家だと思います。能力のある彼によってフランスにはやっと新しい風が吹くのではないでしょうかね。
3、フランスの行政が改善されるのを期待します。ただ、フランスには常に反対勢力が存在し、その力がマクロンの当選によってさらに強くなり政策が脅かされるのが心配です。
ラファエル (35歳、大学講師)
1、エマニュエル・マクロンが次の大統領でしょう。
2、フランスの状況は良くなると思います。
3、今度の任期で改革が具体化され、フランス人の生活もよくなると思います。UE政策に深く貢献し、外交にも力を入れてほしいです。具体的に言えば、シリア紛争を解決に導き、アフリカや中近東の難民を受け入れ、その重大さをフランス人やヨーロッパの人達に説得してもらいたいです。フランス国内においては政教分離の意識を市民にもっと強く持たせ、行政改革を速やかに執行し、議員制度の改革、公共投資の再開を期待します。あと、今後5年以内に失業率の2~3ポイントの低下を望みます。
レオ (29歳、研究者)
1、マクロンが次の大統領でしょう。
2、希望が全くないわけではないが、何も期待していないです。
3、左派と右派の思想をもっとはっきりさせ、年金制度の改革、国費の改善化、れっきとした税金制度の改革、行政案の執行をもっとスムーズにさせ、労働者の養成へ国がもっと貢献することを望みます。
能力のある内閣をちゃんと形成できるのかが心配です。
ナタリー (38歳、フランス語教師)
1、エマニュエル・マクロンが勝つと思います。
2、フランスの状況が良くなるとは思いません。生活レベルの差がさらに広がり、国民のフラストレーションが募るでしょう。
3、マクロンが掲げるプログラムは曖昧だからです。彼のその曖昧さは社会構造を不規則にさせ、社会の大部分に不公平を生み出すこととなるでしょう。
Posted by スザンヌ 内堀
スザンヌ 内堀
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学生。スザンヌはニックネームです。30代でまだ学生。ロケット工学の研究しています。欧州で一花咲かせたいけど、まだ何者でもないわたし。専門は亜酸化窒素ガスを酸化剤にし、合成ゴムを燃やすハイブリットロケットです。