PANORAMA STORIES
映画祭で自分をアピールしたい。~フランス映画界での人脈作り〜 Posted on 2017/05/12 美波 女優 パリ
ブリーブ映画祭は30分から60分の中編映画を扱う、ヨーロッパでも数少ない映画祭だ。
パリから約500km、小さな石畳で構築された町、ブリーブラガイヤルドで行われる。
ある日、シネマテーク・フランセーズ(古今さまざまな作品が上映されている素敵な映画館)で働いている人と立ち話していたところ、この映画祭を勧められた。
「フランス映画というのはとても小さな世界だからきっとそこにいけばいい出会いがあるよ。今注目されている若手監督も多いし、大体フランスの映画祭に関わってる人たちが集まる場所だから。」
フランス映画のことをよく知りたい。沢山の人に会って、人脈を増やしたい。人脈を増やしてフランス映画に出たい! 私は、多分野心が強い。これだ! っと思ったものはついつい飛び乗ってしまう。
すぐに宿と電車のチケットを取った。
出発の準備万端。
なんとなく、何かが変わるような、期待と高揚感がつのる。
映画祭は、1週間続く。10時から22時まで3つの劇場でフィクション、ドキュメンタリーと、さまざまな映画が上映され、その都度、監督や作品に関わった人が登壇し、トークや質疑応答を行う。
毎日約10時間、映画館に缶詰になり、夜は皆で食事をし、お酒を飲んだり、その勢いで踊ったり…。
やっぱり映画関係者が多い。
実際にさまざまな人に会って話すことができ、フランス映画の仕組みをリアルに学べる。
2015年カンヌ映画祭でグランプリをとったジャック・オディアールも登壇した。
監督直々に撮影技法を聞かせて貰えるいう、贅沢な時間を過ごした。
短編でも、長編でもない中編映画。尺の長さのせいもあって、脚本、資金、上映、その他多くの面で実現するのにとても難しいのだ。それを皆理解しているからか、前に出ようとする自己中心的な者がいない。
日に日に顔なじみが増えていく。映画祭全体に一体感が生まれる。
コミュニケーション下手だと思っていた私も、映画祭の明るい雰囲気に身を任せ、臆することなく人に話しかけることができた。こういった社交の場で大切なことは、何事にでもポジティブな心持ちで存在することだと実感した。
しかしある晩、仲良くなった人にそんなことを話したら「あはは! 美波が率先して前に出て目立ってたよ!」と言われてしまい、途端に恥ずかしくなった。
私って出しゃばり? 自己中??
「いい仕事を見つけたいという、しっかりした野心があるんでしょ。目的がはっきりしていていいんじゃないかな。人は人。自分は自分だし。でも中には変な人もいるから気をつけてね」
一期一会の世界。桜の季節のフランスで、花開き、可憐に散る映画祭を体験した。
私自身の中に小さな蕾が芽生えたように思える。
フランス映画のシステムはまだまだ奥深く、複雑だけど、こうして映画を愛し、追求している人たちが大勢いるのだ。短期間でもそこに参加できたことは、今後の励みになった。
その後、パリに戻ってからも、映画祭で出会った人たちと会う機会が幾度とあった。
上映会で偶然再会する人、一緒に食事にいくようになった友人、家へ招かれ、集まったり…その度に新たな出会いが積み重なっていく。映画に携わる人たちが、こうやってグルグルと大きな輪を広げながら、フランス映画を世界の映画を支えてきたのだろう。
私の根っこはまだまだか細い。
でも、いつか逞しく、この乾燥した世界に深く、根を張らしていけたらなぁ、と思う。
私の挑戦は続きます。
Posted by 美波
美波
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女優。1986年9月22日生まれ、東京出身。2000 年に『バトル・ロワイアル』(深作欣二監督)で映画デビュー。その後、舞台・映画・ドラマと幅広く活躍している。’14年には文化庁の新進芸術家海外研修制度のメンバーに選ばれ、パリに1年間演劇留学。現在はパリに拠点をおき、多方面で活動している。
2017年11月9日(木)~28日(火)/Bunkamuraシアターコクーン・地方にて、演出・串田和美の『24番地の桜の園』に出演。